第16話長旅

目的地は一週間ほどで着くようだ。整備された道を通っていくとなると、多少回り道になるのでそのくらいかかるそうだ。


その間は交代で眠り、モンスターに不意打ちされないように警戒する。


そして、何かを見つけたらすぐに報告するように馬主に伝える。


長距離移動において、馬車に何かがあったら大変だ。


「エヴァ、食べ過ぎないでよ?必要な分しか食料持ってきてないんだから」


「そこまで馬鹿じゃないわ、でも少しぐらいはいいんじゃない?」


カイトはため息をつくとエヴァをたしなめるのをあきらめる。


「そういえばカイト君に聞きたいことがあるんだ」


チャモロさんは唐突に、


「君、異世界転生者かな?」


そう質問する。


カイトはびっくりして「はい」と答えた。


そんなことを聞かれたのは初めてだ。


「やっぱりか、変わったチートを持っているみたいだし。なによりチートを持っている事自体珍しいからね」


そんな会話をしていると、おどろいて馬主さんが話しかけてくる。


「それはすごいですね。転生するには神の加護が必要ですから」


「確か、俺で2人目の異世界転生者だと聞きました。確かに珍しいですね」


会話に花がさく、こういう長旅は初めてだったので楽しい。タレスの時とはまるで違った。


本当にチャモロさんはいい人だと思う。


・・・一応、エヴァも。














「一旦、この村で休憩しましょう」


馬主さんがそういってカイトとエヴァを起こす。


行路上にある村を中継地点にするようだ。


「うーん!」


カイトは疲れた足を伸ばし思い切り背伸びする。


チャモロさんは一足先に馬車を下りていたようだ。


この村に寄って行くのは休憩と食料の確保だ。


携帯食料は長期間保存はできるがさすがに1週間くらいで傷んでしまう。


だから金貨で食料を交換する必要があった。


こういう主要国から遠い場所にある村などは、金貨は貴重なので、ある程度の金貨があれば交換を断られることは少ない。


「カイト君、こっちは大丈夫そうだよ」


「色々とありがとう」


「いいんだよ。たまには先輩らしいこともしないとね」














「気持ちいい・・・」


丁度宿があったので部屋を借りることになった。


ベットで眠れるのは数日ぶりか、柔らかいベットに体を預ける。


休めるのは1日だけだ。なるべく体を休めないといけない、カイトはすぐに意識を手放した。


・・・が。


「いま、チャンスよね?チャモロの眼もないし」


気づいたらエヴァが目の前にいた。


「うわああああ!」


ドーン!と突き飛ばす。


「残念ね。まあ、」


「油断はしないことね」とエヴァは自室に帰っていく。


なんでこんなやつパーティに入れたんだろう、とちょっと後悔したのであった。

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