第七話 デュエルトーナメント予選

ついにこの日がやってきた。

デュエルトーナメント予選。

カードゲームが前世の比じゃないくらいに流行っているこの世界でも、これだけの規模の大会はそうそうない。

まだ時間には余裕があるというのに会場は人で溢れかえっている。


「人がゴミのようだ・・・・・・」


そして上から見たら俺もそのゴミの一部であろう。

これだけの大会に参加するという事実に緊張を隠せないのかそんな事を言ってしまう。あれだけカードショップに通っていたんだ、きっと大丈夫と自分に言い聞かせる。大会が近くなってからの『ねこや』は人が来すぎてまともに特訓出来なかったが。


「お、はじめじゃねーか!おはよう!」

「おはよう、烈火。早いな」

「へへ、はじめの方がはえーじゃねーかよ!」


俺の背中をバシン!と叩くと「受付いこーぜ!」と前を歩き出す。確かにこれだけの人数だ。受付は早めに済ましておいた方がいいな。そう考え、烈火の後ろを歩き出す。受付の対応をしているお姉さんはもう長いことやっているのかこの長い人の列をテキパキ捌いていく。俺の番がくるまでそう時間はかからなかった。


「はい、ではこちらの用紙にご記入お願い致します」

「ありがとうございます」


渡された用紙に名前などを記入していき、書き終える。


「はい、終わりました」

「確認致しますね・・・・・・大丈夫そうですね。ではこちらのカードをお渡しいたしますね。なくさないよう、お願い致します」

「はい、わかりました」


2枚のカードを受け取ってその場を離れる。

一枚はスタンプラリーみたいにスタンプを押せそうな紙ともう一枚は『564』と書かれた紙だった。


「あ、はじめくん!」

「ん?・・・・・・ああ、海人か。もう来てたのか」


こんな人混みの中よく俺を見つけられたな。

俺は全然分からなかったぞ。


「おはよう、海人」

「うん!おはよう、はじめくん!」

「烈火のヤツと一緒に来たんだが、どっか行ったみたいだな」

「あはは・・・・・・烈火くんらしいね」


ホントにな。目を離すとどこかへ行ってしまう。小学生でこれなのだからまだ小さいときのお母さんがどれだけ苦労したのか・・・・・・。


「ところで数字の紙にはなんて書いてあった?俺は354だったが」

「僕は221だね。単純に来た順番じゃないかな?」

「やっぱりそうか」


来た順番に数字を貰ってバトルするんだからこれは実質ハ〇ター試験なのかもしれない。ここは本当に正しい会場なのか・・・・・・?合い言葉もなしにエントリーできたが。

という冗談は置いておいて他にだれか知り合いいないかな?

広美は・・・・・・いないな。

まあ、いたとしてもこれだけの広さと人の多さなのだからピンポイントで見つけるのは難しいだろうな。


そんなこんなで会場をウロウロしていたら会場のアナウンスが流れた。


「会場にお集まりいただいた皆様にお知らせ致します。まもなくスピリットワールドのデュエルトーナメント予選を行います。受付を済まされている方は受付にて渡された2枚のカードを持って、指定の場所までご移動お願い致します。まだ、受付が済んでいない方は受付の方までお願い致します。繰り返します―――」


「集合だってよ。烈火達は見つからないが、このアナウンスを聞いてたら向かっているはずだし、俺たちも向かおう」

「うん、そうだね!」


海人とともに指定された場所へ向かう。

会場の中だけあってそれほど時間を掛けずに移動できた。

すげえ広いし、何人いるんだよ・・・・・・。


しばらく待っているとステージにマイクを持ったお姉さんが歩いてくる。ステージの真ん中に立つと上からの光でライトアップされる。


「皆様、本日はスピリットワールド、デュエルトーナメント予選にお越し頂き誠にありがとうございます。毎年たくさんの人が集まってくれて、今年もこれだけの人に来て貰うことができました!―――さて、挨拶はこのぐらいにしておいて、早速ではございますが、予選についてのお話に映らせて頂こうかなと思います!皆様、受付で配られたカードのウチ、このスタンプを押せそうなカードを出してください!」


ふむ・・・・・・これだな。


「それが予選を突破するためのアイテムです!そこにスタンプを全て押してください!!勝ったら、隣のスタッフにスタンプを押して貰って次のバトルへ移行してください!負けたら列の一番後ろに並び直してください!なお、不正行為や列の割り込みが起きた場合は即時退場となりますのでご注意ください!」


バトルの横に立ってるスタッフが監視するってことね。


「なお、誰が最初に戦うかは公平性を期すために、ランダムな数字で抽選いたします!皆様、数字が書かれた紙をお出しください!」


言われて俺は354と書かれた紙を出す。

354こい・・・・・・!


「では数字を発表いたします!どうぞ!」


お姉さんがそういうとステージの画面に数字が並ぶ。

354・・・・・・354は・・・・・・ないな。

他の数字は―――。


「221!?」


マジで!?

海人の運良すぎだろ!

いいなあ・・・・・・。


「制限時間は5時間。それでは他の皆様は列に並んでバトルを始めてください!」


―――――っ!と。

反応が良かったからそんなに後ろにはならなかったな。

さて、他のヤツらは―――。

そう考えて当りを見渡す。


「―――!?」


そこには姿


え、なんで烈火海人のとこ並んでんの!?

他にも知らないヤツばっかの列あるだろ!

鬼かお前は!?身内同士で争ってどうするんだよ!


烈火が海人の列に並んだため、烈火の番が来たら絶対に烈火か海人のどちらかは列に並び直すことは確定した。

なにやってんだお前ェ!


まあ並んじまったのはもう仕方ないからな。どっちが負けても俺の列には来るんじゃねえぞ。

改めてスタンプカードを確認する。スタンプを押す場所は15個ある。これだけの人数がいたら並び直す時間も相当だろうし、時間足りるか・・・・・・?まあ抜けていくヤツがいる以上後半の方が並ぶ数は減るんだろうが。

スタンプを押す数によって参加賞が変わるため、15勝を諦めた人も本気で来る。最後まで油断はできないな。


・・・・・・さて、俺の番が来たようだな。


対戦相手の前に立つ。


「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


マナーは大事だ。どうせなら雰囲気良くプレイしたいしね。

対戦よろしくお願いします。




「ミカエルで攻撃!」

「・・・・・・!ソウルで、受けます・・・・・・」


しゃーああい!どんなもんだい!これで一勝!

隣のスタッフさんにスタンプを押してもらい、次のバトルへと移る。

さあ、どんどん行くぜぇ!





「ありがとうございました」

「ありがとうございました・・・・・・」


これで四連勝!順調だぜ!

この調子なら15も楽勝かな!

さて、次の対戦相手が準備している間、俺の列に並んでるヤツはどんなやつか確認しておくか。

どれどれっと。


「!?」


アイエエエ!?カイトサン!?カイトサンなんで!?


いや、お前も別のとこ並べや!ふざけんなよ!?

待て。落ち着け。このまま行ったら当たらない可能性も・・・・・・。


「12、13、14―――」


いや、ギリ14回目で当たるぞ!?

海人、お前船降りろ。


くそ、今は目の前のバトルに集中だ!






「ありがとう、ございました・・・・・・」


これで13連勝!次は――――――。


「―――はじめくん」

「―――海人」


どの面下げて来やがった。

俺の列には来るなって言ったよね?


「君に初めてスピードを教えてもらって、それまで友達がいなかった僕は、烈火くんや君と友達になれた」


なんか自分語り始まったんですけど。


「だから―――その恩を今日、返したい」


いや、仇なんですけど。

そんな師匠を超えるのが一番の恩返しとか、まるで将棋だな。

普通にやめてもらっていいですか?


「いくよ、はじめくん」

「こい、海人」


相手が海人だろうと勝てばよかろうなのだ!!






「ありがとうございました・・・・・・」


え、普通に負けたんですけど。

水龍王マリーンドラゴン強すぎなんですけど。

てか、異世界から来たスピリットと契約しないと手に入らないカードとかズルくないですか?どうなんですかスタッフさん?


「はい、おめでとう。次も頑張ってね」


あ、普通にスタンプ押してますね。


「ありがとう、はじめくん」


いや、そんなやってやったぜ。みたいな顔でこっち見るなよ。

ちっくしょー!見てろよ、ここで終わらないからな!



その後知り合いのいない列に並び直し15勝達成した俺であった。









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