第3話 燃え尽きの谷

 リゼが次に辿り着いたのは、暗く深い「燃え尽きの谷」だった。谷には重い霧が立ち込め、進むべき道が全く見えない。足元には崩れた岩や枯れた草花が散らばり、生命の気配が全く感じられない場所だった。


 谷の中心には大きな灯台が立っていた。しかし、その灯台には光がなく、暗闇の中でただの影のように佇んでいる。


 「ここは……どうしてこんなに寒々しいの?」


 ふと声が聞こえた。

 「ここは燃え尽きた者たちの谷だ。この場所で、情熱の火を灯せるかどうかが試される。」


 リゼは自分の胸に手を当ててみた。しかし、何かが冷たくなっているのを感じた。今まで感じていたあの熱い気持ち――「美しくなりたい」という夢への情熱が、霧の中で薄れていくような感覚に襲われた。


 「私、情熱を失ってしまうの……?」




 燃え尽きの谷を進むうちに、リゼはさまざまな声を聞き始めた。


 「もう無理だよ。」

 「こんなに頑張っても、どうせ報われない。」

 「他の人みたいに輝けるわけがない。」


 その声は、自分の内側から湧き上がってくるものだった。リゼがこれまで心の奥に押し込んできた、恐れや不安の影。


 霧が深まるたび、リゼの心はどんどん重くなっていく。足を動かすのも辛くなり、ついには膝をついてしまった。


 「どうしてこんなに苦しいの?夢を追うって、こんなにも難しいことだったの?」


 彼女の中で、夢を追う意味に対する疑問が膨れ上がる。しかし、そこに希望を見出す光はまだ見えない。




 ふと、リゼの目の前に小さな光が灯った。それは燃えるような赤い花だった。谷の枯れ果てた地面に咲く唯一の生命。


 「こんな場所でも花が咲いている……どうして?」


 彼女が花に近づくと、その花は淡い炎のような光を放ち始めた。そして、不思議な声が響いた。


 「この花は情熱の象徴だ。どんな暗闇の中でも、ほんの少しでも熱を灯し続ければ、再び燃え上がることができる。」


 リゼはその言葉に心を打たれた。確かに彼女の心の中には、小さな情熱の火種がまだ残っていることに気づいた。


 「どんなに小さくても、火種がある限り、私はまた進める。」


 彼女がその花をそっと手に取ると、花の光が大きく輝き始めた。そして、その光が霧を払い、谷全体に暖かな光が広がった。


 「私の情熱……まだ消えていない。」


 灯台がその光に応えるように輝きを取り戻し、リゼの進むべき道を照らし始めた。




 リゼは燃え尽きの谷で、自分の情熱がどんな状況でも消えないことを知った。暗闇の中でも情熱を灯し続ける勇気を得た彼女は、次の試練に向けて再び歩き始めるのだった――次なる試練は、彼女の美しさの本質を問うものである。

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