12

「嘘って、何がですか?」

なんで、嘘って決めつけるんだ。そんなすぐにわかる訳がない。

「いいかい。男の頭のケガは後頭部。つまり頭の後ろの部分なんだ。躓いて後頭部をぶつけるのは結構無理のあることだと思う。それにね、岩があったのは木の根があった位置からおよそ2m以上離れた場所であったらしい。躓いて後ろ向きでその場所に頭をぶつけるのは私には難しく感じるね。」

「でも本当に!」

「君は、何を隠しているんだい?」

警官が今日聞いた中で一番怖い声で僕にそう言った。

どうしよう。もう、嘘を付けない。どうしよう、どうしよう、どうしよう。

メイ、僕はどうしたらいいの?メイ、僕を助けてよ。メイ、メイ。何か言ってよ。

僕の祈りが通じたのか、メイは口を開く。


「トラオ、もう嘘を付くのは無理なんじゃないかな?素直に話しちゃおうよ。」


え?メイ?メイは今なんて言ったの?もう無理?そう言ったの?メイは僕を助けてくれるんじゃないの?

混乱している僕をよそにメイは警官に僕から聞いた話をすらすらとは話している。

男に襲われたこと。必死に逃げて捕まりそうになったから男を突き飛ばしたこと。その後、逃げたこと。

「そういう事なら一度署に来てもらって話を聞く必要があるね。トラオ君って言ったかい?来てもらおうか。」

終わった。嘘を付いても結局こうなっちゃうんじゃないか。メイは僕を最初からおちょくって遊んでただけなんだ。メイは、そういうやつなんだ。

「ちょっと待って。おまわりさん。」

メイは静かに言う。

「うん?なんだい?」


「勘違いしているよ?あの男を殺したのは。」



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