8
メイに促されるまま、僕は今日の出来事を話した。友人たちと遊んだ後に帰宅するためにあの林に立ち入ったこと。そこであの男に話しかけられ襲われたこと。追いかけてくる男から必死で逃げたが途中、
こうして状況を整理してみると確かに少し落ち着いた気がした。それと同時にやっぱり男を殺してしまったという罪悪感が溢れてくる。
「まとめるとこんな感じだよ。」
「そんな状況で転ぶなんてトラオはおっちょこちょいだね。」
メイは茶化したように笑う。
「仕方ないだろ、必死だったんだ。それよりメイ僕はこの後どうしたらいいと思う?」
「うーん、そうだねー。まあ今すぐ誰かに何か聞かれるわけでもないし。とりあえず黙っていればばれないんじゃない?まあ、日本の警察は仕事が早いみたいだから油断はできないけどね。」
「そ、そうだよね・・・。でももし誰かになにか聞かれたら?今日じゃなくてもさ、人が死んだらさ、近所の家に聞き込み?みたいなことするんじゃないかな?そうしたらどうしよう。」
「そんなこと、簡単じゃないか。君、ずっとやっているじゃないか。」
「え?」
メイはやっぱりさらっと、さも当然のように言う。
「嘘だよ。嘘を付けばいいんだよ。」
「嘘ってどんな風に?」
「何も困ることなんてないよ、林には行ってない。そう言えばいいだけじゃないか。」
「そんなの不自然だよ。この公園から僕の家に行くのに林を通らないなんて普通に考えたらおかしいよ。」
「大丈夫だよ。トラオは心配症だね。所詮、子供のいう事だ。警察はそこまで突っかかってこないと思うよ。もしそれでもしつこく聞いてくることがあってもトラオは何も知らない。それを突き通せばいいだけだよ。」
メイにそう言われたらそんな気がしてくる。メイの言葉には不思議と説得力がある。
「わかった、そうするよ。ありがとうね、メイ。」
「僕は何もしていないよ、君がボロを出して捕まっちゃうこともあるかもしれないしね。」
「嫌なこと言わないでよ・・・。」
「ふふ、ごめんね。じゃあ、そろそろ帰ろうか。もう日も暮れそうだよ。」
メイに言われた気が付いたが沈みかけていた夕日がもう見えなくなりそうなところまで落ちていた。
「そうだね、帰ろうか。」
そう言って帰路に就こうとした所、目の前にとんでもないものが見えた。
そしてそれはまっすぐ僕たちの方へと向かってきた。
「ごめんね、君たち、ちょっといいかな??」
僕が、今、最も会いたくない人物。警察官が僕たちの前に現れた。
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