3

男の湿度のあるやや高い声が僕の耳に届く。

「え、いや、何って家に帰る途中だけど・・・」

僕は素直に答えた。男は不気味な笑みを浮かべながらさらに僕に話しかけてきた。

「そっかー、僕の家はこの辺なのかな?僕いくつ?小学生?だよね?」


男は呼吸を荒くしながら早口で僕に質問してきた。

「え、あの、はい。小学5年生です。あの・・・なにか用ですか?」

僕はこの男の目的が分からなかったから聞いてみることにした。

「そっかー、5年生なんだねー。あのね、実はね、おじさんね、君くらいの歳の男の子のことがね、好きなんだよね。よかったらさ、今から少しお話しないかな?ね?」


不安が恐怖に変わる。話でしか聞いたことはなかったが間違いなくこの男は不審者であるという事を本能的に理解してしまったのだ。

実際に不審者に出会ってしまった事で僕はどうしたらよいか分からなくなってしまった。僕が固まっている内に男は捲し立てる様に僕に言葉を掛ける。

「ね?ね?いいでしょ?おじさんと仲良くお話ししようよ。ね?大丈夫だよ。おじさん優しいから。ね?痛いこととかしないし。君の嫌がることとか絶対にしないから。ね?おじさんと仲良くしよう?おじさんに着いてきてくれるよね?」


怖い。それ以外のことは考えられない。怖い。この男から少しでも早く離れたい。そう思った僕の体は僕が逃げろと思う前に走りだしていた。

「うわああああああああああああああああああああ」

自然と声が出る。逃げる。一刻も早くこの場所から離れる為、僕の足は全力で地面を蹴った。



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