ロマンチストの告白

鈴椋ねこぉ(すす)

ロマンチストの告白

「僕はこれから、君に告白をする。

 君は『よろこんで』と言って、僕たちは付き合うことになる。そのまま僕たちは学校を抜け出して、デパートに行く。君は本が好きだから、まずは本屋に向かう。難しい本を慎重に選ぶ君に、僕は感心する。その後で僕がよく行くゲーセンに行こう。君が欲しそうに見ているぬいぐるみを、僕は三千円かけて取って、君にプレゼントする。

 次の日、人気者の君と目立たない僕が付き合っていることがクラスに広まっている。驚いた様子の同じクラスの生徒に『本当に付き合ってるの?』と聞かれて、君は少し恥ずかしそうに、僕は自慢げに頷く。昼休みには学校中に広まっていて、誰かが茶化すけれど、僕たちはそんなこと気にしない。僕と君は帰宅部だから、帰りも一緒に帰る。僕は付き合えたことで調子に乗って、君のことを名前で呼ぶ。そしたら君は嬉しそうに笑ってくれる。

 君との日々は楽しいからあっという間に過ぎていく。僕たちは高校三年生になる。勉強や模試のせいで時間が取れないけど、勉強会をしたりテスト対策をしたりと相変わらず一緒にいる。受験シーズンはすぐにやって来る。辛いけれど、ここを越えたら後には大学生活が待っている。僕は君より頭が悪いけれど、君と同じ大学に入る為に少し無理をする。君は僕に勉強を教えてくれる。君の説明は分かりやすいけど、ずっと一緒にいたくて僕は分からない振りをする。それでも君は根気強く付き合ってくれる。そしてめでたく、同じ大学に二人とも受かる。二人でお祝いのデートをする。

 大学に入ったら、僕は夏までに車の免許を取る。夏休みになったら、車で海に行ったり祭りに行ったりしよう。祭りは出店が出ていて、夜には花火が見れるような大きな祭りだ。出店で君はたこ焼きとりんご飴を買う。僕は焼きそばを買って、たこ焼き半分と焼きそば半分を二人で交換する。花火を見る為に、早めによい席を取る。帰りの車で、君は助手席で寝てしまっているけれど、家に着いたら僕が揺らして起こしてやる。そんな瞬間すら幸せに感じる。

 大学を卒業したら、就職が待ってる。最初の何年かは余裕がなくて、二人ともばたばたしているけれど、段々コツも分かってきて後輩も増えていく。その時には、二人は一緒に暮らしている。たまに喧嘩もするけれど、必ずその日のうちに仲直りしよう。家事は分担する。僕は皿洗いも洗濯も買い物も掃除もできるから、任せてくれてもいい。休みの日には少し高い店へデートに行こう。そうして僕たちは少しずつ大人になっていく。

 僕がおっさんになる頃には、僕たちは結婚しているかもしれない。子供がいるかもしれない。何かしらのペットは必ず飼おうか。大型犬は僕が苦手だから、小型犬か猫がいいな。猫は僕にだけ懐かないけど、僕は猫が好きだし名付け親だから許してやる。休みがあったら、ペットはどこかに預けて旅行へ行こう。行ったことのないホテルに四泊くらいしよう。海外でも、日本の旅館でもいい。暗くなるまで観光地を巡ろう。夜はいいもの食べて、朝はバイキングがいいな。

 それからもっと時間が経って、僕はおじいさんになっている。これまでの日々を振り返って、幸せだったね、楽しかったね、とおばあさんになった君が言う。僕はそうだね、と頷く。もしかしたら孫ができているかもしれない。ここまで長生きしたのなら、病気ではなく老衰で死にたいな。それから、僕の方が先に生涯を終えたい。僕は病院のベッドに寝ている。君は時々お見舞いに来てくれて、昔の話で盛り上がる。今この時も幸せだけど、その時には、僕たちは言葉が少なくともお互いの思いが分かるようになっている。子供が孫を連れてやって来る。僕は終わりを悟って皆に、ありがとうね、と言う。君が最期に、私もすぐにそちらへ行きますからね、と安心させてくれたから、僕は静かに眠るように目を閉じる。

 天国で待っていたら、約束してくれた通り、君はすぐに会いに来てくれる。僕たちは手を繋いで、ずっと一緒にいようと笑い合う。

 そうなったら、君はどう思う?」

「ごめんなさい。顔がタイプじゃないの」

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