第2話
ガゼボに辿り着いた僕。
そこには、黒髪の幼女がちょこんと座っていた。
腕には、黒猫のぬいぐるみが抱かれている。
「リックしゃま」
「やぁ、ノア。今日も可愛いね」
「えへへ」
彼女は、ノアール・(エル)・ニンフィタリア。
ニンフィタリア公爵令嬢である。
といっても、僕にもノアにも継承権はないに等しい。
お互いに、継承権第1位の兄姉がいるからである。
僕には、兄姉がおり継承権は順当にいくと8位である。
ノアにも、兄姉がおり6位で僕よりは高い。
まあ、微々たる差ではある。
彼女は、同い年だが舌っ足らずで『様』がなかなかいえず『しゃま』になる。
まあ、普通の5歳児ならそんな物だろう。
僕?僕は、まあ普通じゃない。
前世も含めたら20歳以上になるし。
活舌もそこまで悪くはない。
アンバーの瞳が、いまだ座らない僕をじっと見つめていた。
「リックしゃま?」
「ああ、ゴメンね」
僕は、後ろを付いてきていた侍女に目配せをしてからノアの向かいの席に腰を下ろす。
テーブルの上には、ケーキ、マカロン、クッキーなどのティーフードが3段スタンド…スリーティアーズ…やティーソーサーに載せたティーカップには紅茶が注がれている。
まあ、ノアが飲んでるいるのは紅茶と言うには甘すぎるほどのミルクティーだけど。
彼女の後ろには、うちの侍女のデザインの違うメイド服を身に纏った侍女が控えている。
ノアの…ニンフィタリア公爵家の侍女でリズと言う。
各公爵家の侍女は、それぞれの家紋の刻まれている。
ヴィクトリアスタイルのメイド服が基本である。
その為、長袖ロングスカートで肌を隠すのが主流だ。
白と黒を主体としており、それぞれに異なった色のアイテムを身に着けている。
うちなら緑で、ニンフィタリアは青である。
サラマンドラなら赤。
ピグミーシアなら黄色である。
ちなみに、アリステラ大公爵は金と銀である。
といっても、侍女として身に着けているのは金糸や銀糸を用いたアイテムである。
ちなみに、僕らも各家のイメージカラーを身に纏っている。
ノアは、水色のケープを巻いているし、僕は黄緑色のベストを身に着けている。
といっても、公爵家以外の下級貴族には当てはまらない。
パーティー会場とかに行くと色とりどりのドレスだという。
「ノア、明日の準備は終わっているの?」
「おわってましゅ」
明日は、デビュタント…社交界デビューの日である。
5歳の春に、貴族の子供達の社交界デビューを執り行う。
これは、男女ともにである。
デビュタント自体は、夜会である。
ただし、午前に教会で祝福の儀式がある。
この祝福の儀式をもって初めて『貴族』と認められる。
明日の為に、僕もノアも領都から首都へと来ていた。
シルフィード領は、大陸西部。
ニンフィタリア領は、大陸東部。
実は、領地間としては一番遠い。
お互い、サラマンドラやピグミーシアの方が近い。
だが、同い年の子供はノアだけである。
いや、正確にはもう1人いるが…。
僕とノアの母上は、双子の姉妹である。
その為、事有る毎に首都で茶会を催しては僕らを引き合わせていた。
お陰で、すっかり懐かれている。
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