二転三転、不気味さとインパクト あらゆる要素を網羅した出色の中編ホラー

大学生の長尾は同じ高校だった芦倉に、
彼の亡くなった恋人である穂月の写真を見せられ
彼女を回顧する。

それが恐怖の入り口だとも知らずに。


時を同じくして、長尾の周辺では

・ファミレスで宗教勧誘をされる
・何人かの学生が同じ幽霊を見ている

といった、怪しい噂が巻き起こっていた。


そして長尾は、実際に幽霊を見たという本田に泣き付かれ、
親友の籠澤とともに事件へ踏み込んでいくことに──





というのが本作の簡単なイントロダクションです。

話に巻き込まれた長尾を襲う恐怖。
それらが時に和ホラーのような湿度の高い演出で、
時に王道ホラーのような真っ直ぐ殴ってくる表現で
見事に書き出されています。

また、一見独立した話の柱たちが
じわじわと一つの答えへ収束していく、
しかもそれが無理にではなく丁寧に
準備と手引きがなされる構成には
見事と言う他ありません。

ホラー好き/ホラーミステリ好きにもさまざまな
パターンがあって、好みのテイストは違うと思います。
前述の二種類の演出や表現なんて、その最たるものです。

しかし本作は、そのあらゆるニーズに応えられる
ホラーであること請け合いです。

非常に濃い内容が破綻なく、小気味よくまとめられた
約50,000字の中編ホラー、ぜひご堪能ください。