騒めく1階層
銅級──所謂、初級冒険者の帰還率が著しく低下している。その報告を受けて、冒険者ギルドからとある銀級冒険者パーティが調査に派遣された。
「冒険者の質が低下しているんじゃなくて?」
目付きの悪い、エルフの僧侶が舌打ちしながら言った。
「それもある。しかし、問題が起きているのは1階層だ。ギルドで認定を受けた冒険者ならそう簡単に命を落とすことはない」
と騎士風の男。
過去も帰還率が悪くなったことはある。しかしここまで悪いのは初めてだった。蘇生費が払えずに仲間を生き返らせられないパーティや、借金を背負って冒険者を引退してしまうものが続出しているという。
「そんな事態になっておるとはな。対処が遅すぎるのでは?」
豊かな髭のドワーフがぼそぼそと喋る。
そう。遅すぎたのだ。何せ、帰還しないということはダンジョンで死んでいるということ。死体が回収されなければ生き返らせることはできないし、何があったか情報を聞き出すこともできない。
「それで生き返った冒険者からは何て?」
「今一つ、要領を得ない。オーガを見たという者もいれば、大蛇のようなモンスターを見たという者もいる」
「……5階層相当のモンスターかの。ううむ、そんなやつらがうろついていればすぐに【
「うん。ここらへんには雑魚しかいないね。警戒するまでもないくらいの」
そもそも5階層のモンスターが1階層まで上がってくるのは稀だ。
……モンスターを装った冒険者狩りだろうか。それにしては悪質すぎる。
「あれ? あんなところに大穴あったっけ?」
「地形変動では?」
ダンジョンは一定の周期でその地形を変える。1階層においてはほとんど変化はしないものの、多少の変動は起きる。数か月に一回程度の頻度ではあるが──。
「とにかく調査してみよう。何か変わったことがあるかもしれない」
彼らはそこへ足を踏み入れた。
その後──彼らの姿を見かけたものはいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます