データセンター怪談:幽鬼の内部侵食
横浜県
第一章:不可解な噂
「近頃、データセンターに亡霊が出るって知ってる?」
深夜、編集室に集まった番組スタッフが口々にそう囁き合っていた。
薄暗い照明の下、モニターにはネット掲示板のスクリーンショットが映し出されている。そこには「AIが勝手に変な詩を書き始めた」「監視カメラに黒い影が映った」「社員が行方不明になった」という物騒な書き込みが乱立していた。
オカルト系モキュメンタリー番組「深淵ナビゲーター」のディレクター・
「データセンター」で怪現象など起こりうるのか。
しかし、掲示板は妙にリアルな書き込みで埋まり、噂はただのデマとも言い切れない雰囲気を醸していた。
柚木は眉間に皺を寄せ、パソコンの画面を食い入るように見つめる。
「・・・やばいな、これは。都市伝説的には面白いけど、現実味があるっぽいんだよ。」
そこへカメラマンの
「そう思うだろ? でも書き込みを辿っていくと、同じ会社の内部を知ってるっぽいコメントが多数あるんだ。監視カメラの映像や、サーバールームでの深夜勤務中に奇怪な声を聞いた話とか。妙に具体的でさ。」
浅海は視線を落とし、キーボードを叩き始めた。次々と読み込まれる画像ファイルやツイートのスクショ。そこには、深夜のサーバールームの片隅に立つ影のようなものが確かに映っていた。照明の暗い場所ではあるが、人型のシルエットがやけに生々しい。
「・・・怖いですね。こういう無機質な場所のほうが、逆に幽霊っぽいものが際立つと言うか。」
そのとき、柚木のスマホに着信があった。ディスプレイに表示された名前は「
「まさか、直接連絡が来るとは。・・・はい、柚木です。」
軽く緊張しながら電話に出る。すると受話器の向こうから低い声で、
「お願いがある。先日お送りした資料、検討していただけましたか・・・? やはり社内じゃ何も解決できない。上層部は隠蔽しようとしてる。もう、あなたたちに頼るしかないんだ。」
柚木は浅海と顔を見合わせ、静かにうなずく。
「わかりました。詳しくお話を伺いたいです。そちらに向かうには、どうすれば・・・?」
電話を切ると、柚木は興奮を隠せない様子で言った。
「どうやら本物かもしれない。“当事者”が切羽詰まってるって感じだ。ここは番組として見過ごせないな。やろう、この取材。」
浅海は苦笑しつつ、「やりますか・・・」と肩をすくめた。ただのうさんくさいデマで終わればいいのだが、予感が少しざわついていた。
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