男女逆転の宮廷ファンタジー、コミカルにシリアスに見事なストーリー展開!
- ★★★ Excellent!!!
男女逆転のストーリーが、すごく面白かったです! 雰囲気のよい外国映画を観ている気分でした。
主人公は帝国の皇女、ヴァイオラ。不遇な状況に置かれ、クールさも垣間見える彼女ですが、心中には、平和への熱い意志を秘めています。
父帝の命令で、昏睡した双子の兄の身代わりに、男装して結婚式にのぞみます。思いがけず、結婚相手のほうもまた、女装した王子で……。この逆転のロマンスに、とても胸が高鳴りました。(初夜はどうなる? などなど笑)
主人公カップルを中心に、さまざまな人々によって織り成される、宮廷ドラマ。よく練りこまれたストーリー、性格づけや立ち位置のしっかりしたキャラたち、コミカルなシーンもたくさんあって、とても楽しく、夢中になって読み進めました。
ストーリー展開が本当に見事で、慄然としながら読んでいました。
男女逆転や、笑いのシーンに目がいきますが、ストーリーの根底に流れるのは、戦争に反対する「平和への意志」。戦時下のこの帝国において、登場人物たちが秘めていた平和への意志は、ヴァイオラというキーパーソンのもとに結集し、結束してゆきます。
この作品を最後まで読ませてもらい、次の有名な一節を想起しました。
永遠なる女性的なるものが、われらを高みへ誘う ~ ゲーテ『ファウスト』
本作『男装皇女の逆転劇』には、ヨーロッパ調の美しい情景描写も散りばめられ、このゲーテの言葉がとても似つかわしい。
磨きぬかれた心地よい文章が、読者をまさに、昂揚する高みへと導いてくれます!!!