丁寧に積み上げた世界設定、人物の背景。その流れるような文体によって読むスピードそのままに頭の中に入り、記憶に残ります。一時停止不要です。
とにかくサクサクと読めるくせに(くせに?)、文中に込められている情報量が多い。主に感情、情緒に関して。にも関わらず、実にスムーズに読ませる文章はお見事だと思いました。
とくに登場人物たちの「本音」が巧みにいい感じに隠されていたり、某1名(ハルミカっていうんですけど)だけはダダ漏れだったり。
本作品の舞台背景を単純に咀嚼すると=暗い物語になるだろうとは思うのですが、主人公であるところのイルダナの飄々たる有様(と一部の明るい人たち)がそれをいい感じに希釈します。人物間のやりとりが実に軽妙であるところもその一助でしょう。
いずれにせよ、舞台にしても人物にしても、作者の中で完全に昇華(あるいは消化)されていなければこうは書けないと思います。
最後まで楽しませて頂きました。
ありがとうございます!
----
このあとイルダナはどこで何をするのでしょうかとか、いろいろ想像してしまいますね。その読者サイドの想像の余地もまた、世界設定の充実、そして開示があってこそのものだと思います。
誰もが持っている恐怖。
それを手にして戦った彼らは、強く、勇敢だった。
男性とも女性とも取れる主人公「イルダナ」と、その周りにいる人物たちの絶望と勇気を綺麗にえがいた物語でした。
恐怖を手にする勇気を持つ者、持てなかった者、これから持つ者。そんな彼らがわたしには、まぶしくて。
全ての登場人物が、この世界で。作者の中で。わたしたちの中で。生きているのです。
誰が悪い、誰が良いでは測り切れない。誰もがヒーローになり得る存在だったと、わたしは思います。環境が、きっと、全てを決めてしまった。
人にある二面性。それらを感じれる、最高の作品でした! ぜひ、皆さんもお手に取ってみてください。
最後に、作者様への言葉。
この作品に登場するすべての人物を愛しています。敵も味方も関係ない。誰もが、最高の「人間」でした。ありがとうございます!!
『還し屋』のイルダナは、兄弟子であるアランロドに裏切られ、あろうことか見世物にされてしまう。そんな状況のイルダナのもとへ、母国を奪われたエーディーン王国の第二王子ハルミカがやってきた。
彼はイルダナに、依頼をする。それは、母国の奪還であった。
大スケールの世界観を描き切る作者の筆力は圧巻の一言。壮大などこまでも広がる世界にあって、人物の描写は緻密そのもの。気付けばあれよあれよという間に彼らにのめり込んでいくこと間違いなし。
彼らは互いに互いをどう思っているのか。
なぜ、このようなことになったのか。
読み進める手が止まらなくなるこの作品は、一気読み推奨です。
ぜひご一読ください。
奪われたモノを持ち主や元の場所に還す『還し屋』を生業としているイルダナは、『アイティナラント・ルグ』と呼ばれる大陸の至宝を求めて兄弟子のアランロドと旅をしていた。しかし突然アランロドに裏切られたイルダナは見世物小屋に買われてしまう。そんな彼の前にハルミカという青年が現れ、母国を取り戻して欲しいと依頼してきたが――
めちゃくちゃ面白かったです!もうこれは沼です。一度ハマったら抜け出せない”沼”。
細部までこだわりぬかれた設定と世界観に最初はついて行けるか不安でしたが、読み始めてみたらあっという間に物語の世界に引き込まれます。呪術や精霊、魔法、様々な種族、キャラクターによって戦い方がみんな異なるのも、読んでいてとてもわくわくさせられました。詠唱もかっこよくて必見です!
そんな物語設定も見どころですが、なんといっても私はイルダナとハルミカの絡みが大好きです。作品全体としては重いストーリーなのに、二人の掛け合いは軽やかでテンポが良く、軽口を叩き合っていながらもなんだかんだお互いのことを信頼しているこの関係性が尊くて素晴らしかったです。
ときに衝突もありつつも、行動をともにする時間が増えるにつれて、相手への信頼度が上がっていく感じがもうたまりません。
とにかく面白くて最高でした。不器用で、臆病で、優しい彼らの生き様。己の力と向き合い、懸命に生きる彼らの姿が眩しくて愛おしい。