第3話次のシゴト

 ―依頼人は二十代の男性、職業-ツアーコンダクター、今回のターゲットの被害にあったのは、同じ会社の同僚の小丸早也華、二十三歳、職業ーツアーコンダクター、大手旅行代理店の主催する三泊四日のパックツアーに同行したときのこと。


 四つ年下の後輩であり恋人であった小丸早也華は、毎日就寝前に依頼人に電話してきて、その日あった出来事の詳細を話していたという。

 そのときのツアー参加客は、女性三十名、男性十名の計四十名。内訳は、女性グループが四名が一つ、五名が一つ、十名が二つで、男性グループは、四名が一つ、五名が一つで、ご夫婦での参加が一つあり、ツアーとしてはよくあるパターンであったようだ。


 そしてそのときの悩みの種になったのが、十名のおばさんグループの一つで、観光地での集合時間を守ってくれないと愚痴っていたが、五名の男性グループがとても協力的で助かっていると話していたという。


 ここまでが、依頼人が直接小丸早也華から聴いたことで、その後のことは会社と同僚と、小丸早也華の遺した手紙から依頼人の知ったことだ。


 ツアーは二日目まで晴天に恵まれ順調だったが、三日目最後の見学地で夕立にあい、屋外の遺跡群跡の見学途中ということもあって、雨を凌ぐ場所もなく、皆んなびしょ濡れになった。それでもその日最後の見学地であり、そこから十分弱で、三日目の宿泊旅館に着いたとのこで、温泉でよく暖まるように注意を促して解散したという。


 通常ならこれで、お客さんと直接顔を会わせることは明日の朝までないはずだったが、午後11時ごろ、協力的だった五人グループの男性の部屋から電話があり、一人風邪をひいたらしく、薬を持っていないかという。小丸早也華はフロントで薬をもらい、時間が遅いのが少し気になり躊躇ったが、今回のツアーではとても彼らのお蔭で助かっていたこともあり、一人で部屋にいったという。


 そしてそこで彼らから暴行うけたばかりでなく、最終日のバスの中では、まるで彼女が突然部屋に入って来てサービスをしてくれたかのように話し出す始末。


 前日までの彼らの協力的な態度もあって、他の参加客は彼らのいうことを疑わず、空港で解散するまで、お客さんはもちろん、バスのスタッフからも最低限の会話しかしてもらえなかったが、気丈にツアーを終えたという。


 しかしツアー終了後、旅行代理店には、彼女の対応は公平でなく、問題がありすぎるとクレームがあがっていた。


 依頼人と小丸早也華の所属する会社は、この旅行代理店の子会社にあたり、彼女が事情を話しても代理店までは話しはいかず、会社としては、暫く休みをとるようにと勧めるだけだったという。

 

 小丸早也華が今回のツアーを終えてから三日後、依頼人が知るのは、五泊六日の海外ツアーから帰った後で、彼女が無念の自殺をした翌日のことだった。


 彼女が依頼人宛ての遺書で、どんなに悩み苦しみ、そして無念だったかを知ると、依頼人は何もしてあげられなかったことで、自分を責める日々を送っていた。

 

 依頼人はいつもティが見つけてくる。

 どうやって知るのかは解らない。聞いたこともないし、訊いてもティは俺には話さないだろう。






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