第7話

固まったあたしたちの背後から、「かもな」という台詞が響き、



振り返るとすっかり着替えを済ませた由良さんがジャケットを手に立っていた。




「え、もう時間?」




慌ててウィルが時計に目をやり、「行かなくちゃ」と立ち上がった。




あのスーパーでの一件を思い出さないようにと必死に笑顔を作るも、



隙間からじわじわと滲み出る浅はかな思いが邪魔をしてしまう。




「い、いってらっしゃい」




何事もなかったかのように振る舞う彼はいつものように、「悪いな」とそのジャケットを着込みあたしを見る。

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