第11話

ある土曜日の午後、拓未と美美は久しぶりに家で映画を観ることにした。忙しい日常の中で、二人でゆっくり過ごす時間を持つのは、最近ではすっかり少なくなってしまった。美美は映画を観るのが大好きで、拓未もその時間を一緒に楽しみたいと思っていたので、今日は二人のために特別に何か観ようと決めていた。

「今日は、ちょっと感動的な映画が観たいな。」美美がリモコンを持ちながら言った。

拓未はソファに横たわりながら、少し考え込み、「じゃあ、昔観たあの映画、どう?」と提案した。

美美はそれを聞いて、目を輝かせた。「あ、それ! あの映画、すごく好きだった!懐かしいな。」

拓未が選んだ映画は、二人が初めて出会ったころに一緒に観た映画で、今でも心に残る名作だった。その映画は、愛と別れ、そして再生の物語で、感情が揺さぶられる瞬間が何度もあった。

「じゃあ、これに決めようか。」美美はそう言って、画面に映るタイトルをクリックした。リモコンを置き、二人はソファに肩を寄せ合って座った。

映画が始まると、静かなピアノのメロディが部屋に流れ始め、二人はその中に包まれるようにして静かに見入った。拓未は美美の手をそっと握りながら、画面に集中した。

「このシーン、覚えてる?」美美が小さな声で言った。映画の中で、主人公が大切な人に告白するシーンだった。

拓未は少し笑いながら、「覚えてるよ。あの時は、泣いてたな。」と言った。

美美はその言葉にうなずき、「私も泣いた。でも、あのシーンがすごく胸に残ってるの。」と言った。

映画の物語が進むにつれて、二人はまたその物語の中に引き込まれていった。主人公が大切な人と再会し、心の中の壁を乗り越えようとする場面では、美美の目に涙が浮かび、拓未はその肩にそっと手を置いた。

「大丈夫?」拓未は優しく尋ねた。

美美は目を擦りながら笑顔を浮かべ、「うん、大丈夫。ちょっと感情がこみ上げちゃって。」と言った。

拓未はその笑顔を見て、少し心が温かくなった。「こういう映画、やっぱりいいね。感情がリセットされる気がする。」

美美はその言葉にうなずきながら、「私も。こうして一緒に映画を観ると、普段の忙しさを忘れて、心が落ち着く感じがする。」と言った。

映画が終わると、二人はしばらく無言で画面を見つめていた。感動が胸に残り、言葉にできないほどの温かい気持ちが広がっていた。

「拓未、ありがとう。」美美が静かに言った。

拓未はその言葉に、少し驚き、そして優しく答えた。「どういたしまして、美美。君と一緒に過ごす時間が、僕にとっても大切だから。」

美美はその言葉を聞いて、心から安心したように深呼吸をしながら言った。「本当に、ありがとう。拓未がいてくれるから、どんな時でも乗り越えられる気がする。」

拓未はその言葉に胸を打たれ、「俺も美美がいるからこそ、どんな困難も乗り越えられると思う。」と静かに答えた。

二人はしばらく無言でお互いを見つめ、映画が与えた感動と、二人の間に流れる穏やかな空気を大切に感じていた。そして、拓未はゆっくりと立ち上がり、「お茶でも淹れようか?」と提案した。

美美は微笑んで答えた。「うん、お願い。」

二人はキッチンでお茶を淹れ、再びソファに戻ると、今度は心地よい静けさに包まれながら、温かいお茶を飲みながら過ごした。その時間が、まるで二人だけの特別な瞬間のように感じられた。

拓未はふと、美美の顔を見つめながら言った。「映画を観て、感じたことをお互いに話すだけで、もっと深くお互いを知れる気がする。」

美美はその言葉に静かに頷き、「私もそう思う。何気ない日常の中で、こうして気持ちを共有することが、すごく大事なんだって改めて感じた。」と答えた。

拓未はその言葉を受け入れ、改めて美美の手を握った。「一緒にいる時間が、もっと大切に思える。こうして、何気ない日常が積み重なっていくことが、僕にとって最高の幸せだ。」

美美は拓未の手を握り返し、静かに微笑んだ。「私も、拓未と一緒にいることで、毎日が特別なものになると思う。これからも、ずっと一緒に過ごしていこうね。」

拓未はその言葉を聞いて、心から幸せを感じ、微笑みながら頷いた。「もちろんだよ、美美。これからも、ずっと一緒に。」

その後、二人はゆっくりとお茶を飲みながら、また映画の余韻に浸りつつ、これからの未来を静かに語り合った。どんな困難が待ち受けていようとも、二人は一緒に乗り越えていくという強い気持ちを新たにした。


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