前世で報われない魂が天界より異世界に輪廻転生(ログイン)できないので、異世界の魔族や悪人を斃(たお)して間引くことにした件

緋村 真実

第1話 復讐の果てに

「悪かった……儂たちが悪かった! だから命ばかりは!!」


 懇願しているのは、初老の男。

 その男がいる部屋の周辺、床や壁、そして天井まで人間の血や肉、そして臓物が至る所に飛び散って張り付いていた。


 この地獄絵図を作った張本人――神代かみしろ刹那せつな――はこの光景に気にすることなく、というかもはや眼中になく、次の下手人で葬りさる残り一人の眼前にゆっくりと歩を進めていく。そして懺悔ざんげや泣きすがってくるのも一才合切切捨て、抗いようのない死の宣告を初老の男に突きつけた。


「……お前らのような人面獣心の輩に掛ける慈悲など微塵もない。“”が抱えた苦しみや恐怖、そして生きたいと願った希望を踏み躙り、蹂躙した輩には!」


 刹那が放つ拳の一撃が初老の腹を撃つ。

 次の瞬間、初老の人間は断末魔を挙げることすらできなく、まるで膨らんだ風船が弾け飛ぶ様にその肉体が爆散した。

 その光景に刹那は何も感じない。

 復讐を成し遂げたのに、刹那の怒りは収まらなかった。むしろ増すばかり。


 それでも――


「“あの子たち”が生きやすい世界に輪廻転生するまで、関わった者たちを全て駆逐する」


 己に言い聞かせるように、刹那は虚空に言葉を発する。

 言い終えたその瞬間、刹那の脳裏に言葉が響く。


『その方法では、輪廻転生ログインは出来ません。別のアプローチが必要になります。それは――』


 刹那の脳裏に響く声が、今後における刹那の人生を大きく変える事となっていく。

 そして、この脳裏に響く声が、刹那がこので聞く最後の言葉になるのだった……。

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