まぶしい日差しも、色鮮やかな花々も、フィロメナにはもう見えません。
それでも、彼女はひたむきに前を向き続けます。
日々を支えてくれる家族の温もり、そばにいてくれる婚約者イグナティオスの優しい声。
目が見えなくても、愛されていると信じられるものがそこにありました。
けれど、いつしか彼の言葉に違和感が混じるようになり、ふとした沈黙が胸に刺さります。
触れ合う指先がすれ違い、心の距離だけが広がっていくような感覚。
そんなとき、アスヴァル・バルジミール辺境伯との出会いが、静かな風を運んできます。
彼の声はどこか心地よく、言葉には迷いがなく、気づけば会話の余韻が心に残る。
フィロメナの世界は暗闇のままなのに、彼といると不思議と広がっていく気がします。
この先に待っているのは、約束された未来なのか、それとも新たな道なのか。
フィロメナの選ぶ一歩が、どんな景色を描いていくのか、まだ物語は続いていきます。