第10話 部外者
基本的にこの学校は午前で座学、午後が実技授業を行う事になっている。
食後すぐに運動するというのは健康的にあまりよろしくないのだが、三十分くらいはゆっくり出来たかな。
「はーい! 皆様ー? 今日も実技授業やっていくよーっ!」
『おおーっ!』
ツインテールを揺らしながら先生が叫ぶ。応えるように腕を突き上げるクラスメイトたちのほとんど。先生って人気みたいだな。
「みんなも気が付いている通り! 今日は月初めだよ! だから毎月恒例の模擬戦をやっちゃうよーっ!」
月初めだから模擬戦? 普通逆じゃないか?
その月の成果を披露する場所として、模擬戦をするのが普通だと思うけど……。
「おー、そちらのニューフェイスは腑に落ちていないみたいだねー。良いでしょう! 説明しましょうぞよ!」
目敏くオレの疑問に気が付いたらしい先生が、パチっとウインクを決めた。
なんというか、動きがあざとい。小さいし小動物感がすごい。
「ぶっちゃけ簡単な話だよっ! 模擬戦は努力の成果を披露する場所じゃなくて、自分の不足する部分を明らかにする機会なんだよっ! とりあえず戦ってみれば弱点がわかる。まずはそれを明らかにしてから、そこを一ヶ月間鍛えようって事! おーけーアンダースタード?」
最後のはわからなかったけれど、最初にやる理由はわかった。
最低限戦う力があるのは大前提。その状態で戦い、足りない部分を見つける。
確かに戦士として何が足りないのかは実戦の中で浮き彫りになる。あとはそこを鍛えるなり補うなり道を見つける事で確実にレベルアップ出来るだろう。
最適かは意見が分かれるだろうが、ここなら問題はなさそうだ。
先生に頷く事で返事をすると、話は次へ進んだ。
「でもタルトちゃんは今回お休みだよー」
「えっ、なんで?」
「こらーっ! 目上の人にはもっと丁寧な口調を心掛けるの! 本心ではいくらでも見下しても良いから表面上はちゃんとしないとダメだよ! まー、先生は気にしないし怒らないけど、初回という事で教育だーっ!」
「わ、わかりました」
受けた印象。怖い。
情緒の振れ幅が激し過ぎないか?
何より、最初の言葉だ。怒られた時に感じた圧。反射的に跪きそうになった。
(魔装師を育てる組織の教育者。想定してたよりもレベルが高いのかもしれないな)
誰しも自身にとって都合の良い未来を地盤に予測する。
これはもっと真王の言葉を重く受け止めた方が良いのかもしれない。そう、思った。
「えーと、それでお休みの理由だけど、タルトちゃんはまだ初日だからねっ! 今日のところは見るのが勉強! おけまる?」
「……わかりました」
最初の話なら、むしろ初心者こそ参加するべきなんじゃないか?
先生は心配しているみたいだけど、この国に来る前に魔装具の使い方は我流ながら訓練している。だから問題はないのだが……知るわけないか。
「と! 言うわけで! そろそろ始めよっか!」
手を叩き、満面の笑みを咲かせた先生が宣言する。
模擬戦の始まりだ。
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