第18話 城の門番達との激闘
黒い雪が降り続く「ブラックスノウ・ファンタジー」の世界で一際目立つ白い城・アルブルシャルト。
魔王ラズルメルテの居城。そして、拐われたノワールが居る場所でもある。
友成はトラス・リコレライゼで、アルブルシャルトの門前の広場に着いた。門は8メートルぐらいで巨大。門の両側には3メートルぐらいのガーゴイルの石像が1体ずつ立っている。
門も石像もデカいな。あの大きさの門を押して開ける気しないぞ。
「グレイ、気を引き締めろよ」
友成の身体の中にいるヴァイルドが言う。
「あぁ、気を引き締めるよ。城に入れば危険が多いもんな」
「いや、入る前にも危険があるから言ってるんだ」
「どう言う事?」
もしかして、門の前に落とし穴があるのか。それとも、あのガーゴイルの石像達の目からビームでも放たれるのか。
「門の両側に立っているガーゴイルの石像達は近づくと襲って来る」
「マジかよ」
ビームではなかった。けど、襲って来るのか。面倒だな。
「それに属性持ちだ。左側が光属性、右側が闇属性だ」
「属性持ちかよ」
相反する属性か。弱点をつける武器や魔法も攻撃する相手を間違えたら面倒な事になる。
「あと2体同時に倒さないと復活する」
「面倒すぎる」
一人で2体同時に倒すのは色々と気を使わないといけない。
友成はメニュー画面を開き、魔法リストを確認する。
何か使えそうな魔法あったけ。2体同時攻撃出来る魔法とかあればなぁ。無属性で。
友成は、魔法「レプリック・シュヴァリエ」をタッチして、効果を確認する。
えーっと、『MPを半分消費する。1分間、使用者と同じ能力を持った戦士「レプリナイト」を召喚する事が出来る。「レプリナイト」は使用者の意識と繋がっており、イメージした通りの動きを行う』か。いいじゃん。無茶苦茶いいじゃん。2体とも弱らせて最後に「レプリナイト」と同時攻撃すればいける。
よし、これを使おう。
友成は特技リストも確認する。
2体同時に戦わないといけないからな。攻撃と回避が一緒に出来る技とかないか。ないよな、そんな有能な特技。
友成は特技「ソニックブーム」をタッチして、効果を確認する。
『剣装備時だけ使用可能。目の前に強ダメージの斬撃波を放つ。その際、身体が攻撃の反動で後方に飛ばされる』か。これ戦う場所を選ぶ特技だな。でも、今回の戦いならメリットになる。
友成は身体ごと横を向く。そして、鞘から灰炎の剣を抜き、脇構えをする。その後「ソニックブーム」と言いながら、横振りした。すると、灰炎の剣から斬撃波が放たれる。それと、同時に身体が後方に飛ばされる。
目視だから正確じゃないけど、3メートルぐらいか。これなら使える。
「何をしてるんだ?」
身体の中にいるヴァイルドが訊ねてくる。
「色々と確認作業だよ」
友成は灰炎の剣を鞘に戻す。
「……そうか」
友成は門に向かおうとした。すると「ちょっとストップ」と、千戸浦の声が聞こえる。
友成は立ち止まり、「びっくりするじゃねーか」と言う。
「ごめん、ごめん。可愛いあたしに免じて許して」
「いいけど、用はなんだよ」
反省してないだろ、和紗のやつ。まぁ、いいけど。
「ガーゴイルの石像達について伝えたい事があるの?」
「なんだ? 2体同時に倒さないといけない事なら知ってるぞ」
「その事ではなぁい。攻撃パターンについて」
「攻撃パターン?」
「うん。ブラックスノウ・ファンタジーを解析してて分かったんだけど、そいつら攻撃パターンが3パターンを存在するの」
「マジか。でも、守護獣達はヴァイルドの話じゃ新しい攻撃パターンが増えてたみたいだからこいつらも増えてるんじゃ」
「安心しなさい。あたしを誰だと思ってるわけ」
「千戸浦和紗」
「え、なんて?」
聞こえてるだろ。絶対に。
「幼馴染の千戸浦和紗です」
「もう一度聞くね。なんて?」
和紗の煽りがムカつくな。
「幼馴染の超絶可愛い千戸浦和紗様です」
これ以上は絶対に言わないからな。
「はい、よく言えました」
拍手の音が耳に入ってくる。うぜぇ。
「いいから教えろ」
「満足したから言うね。そいつらだけは元々の70レベル。技のパターンや能力が変更された形跡もない。だから、初期設定のまま」
「なるほど。それじゃ、3パターンの攻撃を教えてくれ」
「りょうかい。まずはパターン1。ガーゴイルが交互に爪攻撃を仕掛けてくる。パターン2はそれぞれの属性の魔法を放ってくる。パターン3はガーゴイルがプレイヤーの前方と後方から属性効果ありの爪できりさく攻撃を同時に仕掛けてくる」
「OK。理解した」
まぁ、楽勝ではないが倒せるな。
「指示とか出した方がいい?」
「頼む」
普段遊ぶ時なら断るけど、攻略しないといけないから縛りとかはいらない。指示を出してくれるならありがたい。それに即席コンビじゃない。だから、指示の意図などは理解出来る。
「りょうかい」
「じゃあ、倒しますか」
「グレイ。もしかして、神様と話してるのか」
身体の中にいるヴァイルドが訊ねてきた。
「お、おう。そうだ」
「そうか。この前も思っていたが神様に対して馴れ馴れしい態度を取りすぎじゃないか」
「フレンドな神様なんだ。タメ口じゃないと怒るんだ」
苦し紛れの返答にどう答える、ヴァイルド。
「なるほど。変な神様なんだな」
ヴァイルド、それはそれで神様相手なら失礼な発言になるぞ。
「おう。そうなんだよ。変な神様なんだ」
「それなら仕方ない。理解した」
「理解してくれたならよかったよ」
ホッとした。ヴァイルドがたまに本当の人間のように思えて仕方がない。それほど、質問してくる内容が人間っぽい。
「変な神様ってなに? せめて、可愛い神様って言いなさいよ」
友成の耳に千戸浦の怒っている声が直接入ってくる。
せめて、可愛い神様ってなんだよ。無視だ。無視。
友成は門に向かっていく。
「立ち去れ」
「命が欲しくば立ち去れ」
ガーゴイルの石像達から禍々しい声が聞こえる。
「立ち去るわけないだろ。魔王ラズルメルテを倒して、ノワールを救いに来たんだだから」
友成なガーゴイル達に言い返した。
「愚かだ」
「ここで死にたいのか」
「誰が愚かだ。愚かなのはお前らだろ。石っころ×2」
「そうか。それなら仕方がない」
「お前には此処で死んでもらう」
ガーゴイルの石像達の色が変化していく。
左側が白色のガーゴイル、右側が黒色のガーゴイルになった。
ヴァイルドの言った通りだ。
「遊ちゃん。白色の方をシロちゃん、黒色の方をクロちゃんって呼ぶね。OK、遊ちゃん?」
友成の耳に千戸浦の声が直接届く。
わざとか。わざとなのか。でも、言い方的にふざけてない。だとすると、ナチュラルにややこしくしてる。
「ちゃんばかりでややこしいから白色はシロ、黒色はクロで頼む」
「わ、わかった」
「じゃあ、いくぞ」
友成は灰炎の剣を鞘から抜く。その後、ガーゴイル達に向かっていく。
白いガーゴイルが手を振りかざす。
「パターン1だよ」
千戸浦の声が聞こえる。
「了解」
白いガーゴイルが爪攻撃を仕掛けてきた。
友成は最小限の動きで避けてから、白いガーゴイルを灰炎の剣で斬る。
連続で攻撃はしない。なぜなら、黒いガーゴイルがもう手を振りかざしているから。
友成は黒いガーゴイルの方に身体を向ける。
黒いガーゴイルが爪攻撃をしてくる。
友成は最小限の動きで避ける。その後、黒いガーゴイルを灰炎の剣で斬る。
そして、2体から距離を取る。
「さすが、遊ちゃん」
「どうも」
黒いガーゴイルの目の前に魔法陣が現れた。
「パターン2」
「はいよ」
黒いガーゴイルの目の前にある魔法陣から黒魔法が放たれる。
友成は黒魔法を避けて、白いガーゴイルを見る。白いガーゴイルの前にはすでに魔法陣が出現してる。
殺る気満々じゃねーか。くそったれ。
白いガーゴイルの目の前にある魔法陣から白魔法が放たれた。
友成は白魔法を避けた。
「遊ちゃん、クロが背後に周ってる。もうパターン3に移行してる」
「マジか」
ちょっと目を逸らしただけなのに。このゲーム一人攻略推奨じゃねーな。
「和紗、2体が襲ってくるタイミングになった瞬間に『今』って言ってくれ。頼む」
「わかった」
友成は身体ごと横を向く。そして、灰炎の剣を脇構えて、目を閉じる。
集中しろ。集中すれば大丈夫だ。
「今」
千戸浦の声が聞こえる。
友成は目を開けて、「ソニックブーム」と言いながら、灰炎の剣を横振りした。灰炎の剣から斬撃波が放たれる。それと、同時に身体が後方に飛ばされる。
視界の先にはお互いの属性効果ありの爪攻撃をもろにくらっているガーゴイル達の姿がいる。
「流石、遊ちゃん」
「どうも」
友成はダメージに悶えているガーゴイル達の元へ駆けていく。
「レプリック・シュヴァリエ」
友成はMPを半分消費して発動した。すると、自身と同じ姿をした「レプリナイト」が現れた。
「俺は白い方をやる。お前は黒い方をやってくれ。そして、攻撃のタイミングは全部同じで頼む」
友成はレプリナイトに意志を伝える。すると、「承知」と脳内に届いた。
これはすげぇや。
友成は白いガーゴイルが攻撃する隙を与えないように灰炎の剣で斬り続ける。
白いガーゴイルは弱っていく。
「あと少しだよ」
千戸浦の声が聞こえる。
「これで最後だ」
友成は白いガーゴイルに会心の一撃を与えた。
白いガーゴイルは消滅した。
消滅したって言う事は。黒い方も。
友成は黒いガーゴイルの方を見る。すると、レプリナイトに倒されて消滅していく黒いガーゴイルがいた。
レプリナイトは役目を終えて、姿を消した。
「いや、危なかった」
友成はその場に座り込んだ。
少しでもタイミング間違えてたらやばかった。
それだけ緊迫した戦いだった。
「マジで天才だわ」
千戸浦の感心している声が聞こえる。
「サンキュー。和紗のおかげだわ」
「まぁ、それは否定しない。けど、よく初見で倒せた」
「ラッキーだったわ。これで能力上がってたら無理だった」
「確かに」
千戸浦は言った。
「よくやった。扉が開くぞ」
友成の身体の中に居るヴァイルドが言う。
アルブルシャルトの巨大な扉が自動で開いていく。
「しゃあ、行くぞ。休んで暇はねぇ」
友成は立ち上がって、アルブルシャルトに入っていく。
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