可愛い子にはツーリングをさせよ

涼風柚葉

CuteGirl.1 私の相棒

2025年、2月。まだ肌寒い季節ではありますが、新宿は暖かくなりつつあります。私は最近自分の車のタイヤをスタッドレスタイヤから夏タイヤに履き替えました。


もう春はすぐ近くまで来ています。


私の名前は西園寺柚花。年齢は24歳です。


免許をとって6年近くになりました。免許取り立ての頃は父のおもちゃとして車庫に置いてあったミニカダンガンに乗っていました。


そして免許をとって4ヶ月ほど経った頃、そろそろ自分の愛車が欲しくなりました。

そう、ミニカダンガンは自分の車だと思えなかったのです。


その時目に入ったのがこの『日産フェアレディZ Version ST nismo改』でした。


外観はnismo仕様ですが、中身は普通のZです。nismoも買えはしましたが、オートマのマニュアルモード付きだったので、普通のZを買って外観をnismo仕様に仕上げました。



改造費も合わせて680万円くらいで済みました。



そんなフェアレディZで今日も私は出かけます。



「ヴォウヴォウォヴォヴォ」エンジンをかけ、ステアリングを握ると私はZと2人の世界に入っていきます。Zは私の彼氏のような存在です。



中にはMTを苦手にしている人もいますが、最近のマニュアル車はすっごい運転しやすいんですよ。1速に入れてブレーキを放し、クラッチ操作だけで簡単に走り出すことができます。


これをシンクロレブコントロールといいます。


最近のエンジンは低回転トルクが豊富になったので、このままシフトダウン

してもショックがなく、とても気持ちいい走りをすることができます。



今日は火曜日で仕事が休みなので朝からツーリングに出て、伊豆の方へ向かっています。私はこのZと遠出をするのがとても好きで、週末には東京を出て松本、箱根、群馬などによく出かけます。走行距離はもう4000kmを超えていますが、まだ一度も故障を起こしていません。


まあ、安全運転をしているので当たり前なんですけどね。


にしても、伊豆の方は自然が豊かで窓を開けると車内に涼しい風が入って来ました。暫く走ると左側に『Cafe & Restaurant Mensa 』というお店が出てきました。


私はそこの駐車場に車を停め、車を降りました。そこには私と同じ『日産フェアレディZ』のRZ34型が7台停まっていました。そう、今日は月に一度のイベントがあるのです。


その名も『フェアレディZ女子会』です。このイベントを簡単に説明すると、フェアレディZの現行型(RZ34)に乗っている女子が集まった会です。今日は伊豆半島の恋人岬目指してツーリングをします。私は車に乗り込み、シフトを1速に入れました。



その時、誰かが私の名前を呼んだように聞こえ、一度車を降りました。



車を降りると、隣に停まっている『フェアレディZ Version ST』に乗っている。私の友達が声をかけてきたのです。「シフトが1速に入らなくなったんだけど、助けてくれない?」


私は彼女の車に乗り、何が原因か調べました。原因は分からなかったけれど、クラッチを切って1速に入れ直すと元に戻りました。これでようやく出発できそうです。


一番奥に停まっていたZが国道に出て、それに続く形で私も国道に出ました。


「ヴォヴォヴォヴォヴォヴォ」「コク」「ヴォヴォヴォヴォ」あまり早くシフトアップしてしまうと面白くないので、私は少し引っ張ってからシフトアップするようにしています。


走ること1時間。恋人岬に到着しました。車も人もたくさんで、特に海外の観光客がたくさんいます。とても天気がいいので、みんなで記念写真を撮ることにしました。


海がよく見えるところで1人の男性にスマホとデジカメを渡し、写真を5枚くらい撮っていただきました。「どうせならZと一緒に撮りたかったよね」「そうだね〜」


やはり、みんな考えていることは同じのようで、私もそう思っていました。


せっかくのツーリングなのに愛車の映らない写真は嬉しくはないものです。


そこで私たちは伊豆から帰るのに首都高の湾岸線を通り、大黒PAに立ち寄って写真を撮るという話が出てきて、満場一致で向かうことになったのです。


時刻は夕方4時を少し過ぎた時間。大黒PAに向け、第2のツーリングがスタートしたのです。


伊豆から東京までは大体2時間半近くかかるとネットに載っていました。静岡からですし、それぐらいかかってもおかしくはないですが、長い旅になりそうです。


私自身、ロングドライブは好きなのでなんとも思いませんでしたが、私の友達の沙莉ちゃんは、ロングドライブが苦手らしく、あまり乗り気ではなかったのですが、行き先が『大黒PA』に決まった時は、人一倍嬉しそうにしていました。


このZにもインテリジェントクルーズコントロールが標準装備されているので、高速でも足が楽々になってロングドライブによる負担を軽減してくれます。


走ること数時間。現在は午後5時13分。東京に入りました。大黒PAに近づくにつれてスポーツカーが増えているのです。今から行く大黒PAは、車好きにとって一度は行ってみたい場所になっているとおじーちゃんから聞いたことがあります。


そして走ること数十分。


大黒PAに到着しました。やっぱりスポーツカーがたくさん停まっています。


34GT-Rや80スープラ、FD、86など有名なスポーツカーが停まっていました。

ちょうど8台分停める場所があったのでそこにZを停めました。


「これで愛車とのツーショットが撮れるねぇ」


Zがたくさん停まっているため、色々な人が集まってきました。


「Zに乗る女性がこんなに集まっているのはすごいな。」近くにいた男性が呟きました。


カラーが一台ずつ違うのでとてもカラフルです。そういうところも立ち寄った人を楽しませていることなのでしょう。Zはかっこよくてかわいいので人気が高いと勝手に思っています。


出口付近では『大黒イキリダッシュ』というイベントが開催されていました。


自販機で買った缶コーヒーを口にしていると、向こうのほうから白いR34GT-Rと黒い32GT-Rがやってきました。見るからに走り屋仕様と言える車です。GTウイング、ロールバー、前置きインタークーラーなどお金をかけたチューニングが施されています。


「ねえ、あの34に乗ってる男の子、雑誌に載ってる人じゃない?」


沙莉ちゃんが私に尋ねました。「う〜ん、どうだろう。」私は確証がなかったのでうまく答えられませんでした。すると、沙莉ちゃんが自分の車からチューニングカー雑誌『Limit Speed』を出してきました。パラパラめくりながら34GT-R特集のところを開いて、見せてきました。「ほらここ、車と一緒に写ってる。『神宮寺駿』だって」


神宮寺駿という人は『JRT FACTORY』を経営している若いチューナーです。大排気量にするチューニングからさまざまなことをしている人です。彼は車に対し、優しく真摯に向き合うことから、ファンが多く、支持を得ているそうです。私よりも知識が凄そうで憧れてしまいます。一度でいいから私のZをみていただきたいなあと思いました。


「ねえ、柚花。私、恋したかも」「え!?」私はつい大きな声を出してしまいました。


その恋の相手は誰なのでしょうか。私はその日から気になることとなったのです。


そして、月に一度のZ女子会は幕を閉じました。


次の日。私は仕事があるので、早起きしました。顔を洗い、朝食の時間です。


朝食のメニューは、トースト、たまごサラダ、ウインナー、ヨーグルトです。朝食を済ませ、身支度をしたらZに乗って職場へ向かいます。私は日産東京葛飾店のサービス工場で、TSとして働いています。。私を含め35人のスタッフが働いております。


日産東京葛飾店に着いたので、工場の隅にZを停め、作業服に着替えます。


午前9時。工場長の朝礼です。


「おはようございます。本日も肌寒いですが、仕事をすれば暖かくなります。分からないことがあれば、なんでも聞いてください。それでは今日も一日頑張りましょう」


工場長の一言が終わると、車両の点検、車検の準備に入りました。


「柚花ちゃん。今日、あなたが担当するのはこの2台よ。」先輩のTAの方が伝票を渡しにきました。書かれていた車は『日産 ティアナ(J31型)2004年式』と『日産 キューブ(Z12型)2014年式』の2台です。2台といっても午後に増える可能性もあるので気を抜いてはいられません。この工場には年式の古いものから新しいものまでたくさん入ってくるのです。


私はまずはじめにキューブから手をつけることにしました。キューブはコラムシフトなので私は操作したことがなく、分かりませんでした。私は誰かに聞こうとしたのですが、みんな忙しそうだったのでなかなか聞き出せず、キューブを後回しにしてティアナを先にやることにした時、工場長が近寄ってきて、私に声をかけました。


「なんか困ってる?」「はい。コラムシフトの操作方法が分からなくて…」


この時、私は今朝、工場長が言っていたことを思い出したのです。


『分からないことがあれば、なんでも聞いてください。』


工場長は私が入りたての頃、『分からないことをそのままにしていても意味がないし、事故に繋がってしまう。そうなるぐらいなら分からないことを私に聞かせて欲しい。私はこの工場の責任者なんだから』と言っていました。


コラムシフトは私が生まれた時存在はしていましたが、私はまだ免許を取れるような年齢ではなかったので乗ったことがありません。だから分からなくても仕方がなかったのです。


そこで、私は、工場長にコラムシフトの操作方法を教えてもらい、リフトに載せることができました。学ぶことはやっぱり大事だと気付かされますね。


あれこれやっている間にお昼になっていました。


そこで、今日は近くによく行くおそば屋さんがあるので歩いて行くことにしました。「西園寺さーん。一緒にそのおそば屋さん行ってもいいですか?」後ろから同僚の斉藤梨杏さんと村田風花さんが来て、一緒にそのお店へ行くことになりました。


このお店は『蕎麦処 北斗庵』という名前で1912年創業の老舗蕎麦店です。定番の『ざるそば』や『かけそば』の他にも『天ぷらそば』や『鴨葱そば』もあります。その中で一番人気の『極上海老天かけそば』が私は一番好きでいつも注文しています。


さっと食べられるのがおそばのいいところです。店を出て工場に戻り、私はZを洗うことにしました。今日は天気が良いので絶好の洗車日和です。工場長から洗車機を使っても良いか許可をもらい、Zを洗車機の中に移動させました。大体5分くらいかけて洗います。


洗い終わったので、丁寧に拭いていきます。ついでにコーティングとワックスまでかけちゃいました。もうすぐ1時になるので、Zを元の場所に停め直し、持ち場に戻ります。


お昼の仕事も完璧にこなし、時刻は18時過ぎ。他のTSが片付け始めたので私も片付け始めます。片付けをしたり、車両をしまったら、終礼です。


「皆さん。今日もよく頑張りました。今日はゆっくり休んでください。また明日もよろしくお願いします」工場長の一言が終わり、解散となりました。


「ヴォウンヴォヴォヴォヴォ」「コク」「ヴォォォォォ」


せっかくなので銀座の方を回ってナイトドライブをしながら帰ることにしました。私の中で銀座にはお高いダイヤモンドなどのお店があるイメージです。


そんなキラキラした景色を見ながら走っていたら、道を歩いている女の子が私の方を見て手を振ってくれたので手をふり返してあげました。女の人が乗るスポーツカーはやはり珍しいものなのでしょうか。私にはよく分かりませんでした。でも、嬉しい気持ちになりました。


家に帰ると、夜の7時を回ったところでした。夕食は一蘭で済ませたので、そのまま部屋に行きました。私の部屋はそんなに広くないですが、ロフトベッドがあるのでスペースを有効活用できますし、場所も取らないのでおすすめです。本棚には『ハチマルヒーロー』が20冊近く入っていて、隣の棚には、RZ34のミニカーなどが並べてあります。ベッドの下にあるデスクにはNECの最新PCが置いてあります。それ以外には漫画専用の棚が三つあります。そんな感じの私の部屋です。


ぬいぐるみなどはあまりありません。あるのは『NISSANベア』のぬいぐるみだけです。


23時を過ぎたので、今日は寝ることにしました。


朝起きると6時20分でした。


顔を洗い、着替えて朝食を摂り、家を出ました。


今日はTS講習会というものが日産グローバル本社で行われるため、そこに向かいます。


講習会が始まるのは午前10時30分からなので、8時30分に家を出れば、のんびり行けるだろうと思いました。


用意を済ませ、家を出ます。エレベーターで地下に降り、Zの元へ向かいます。


Zの鍵を開け、車に乗り込み、今日の資料に目を通して、エンジンをかけます。


「ヴォォウヴォォォォォォ」『おはようございます。今日も安全運転で行きましょう』


カーナビがいつものように挨拶をしてきます。『コク』シフトを1速に入れ、走り出します。

しばらく走っていると、スタバがあったので寄って冷たい飲み物を買うことにしました。


『いらっしゃいませ。マイクに向かってご注文をどうぞ。』


「えっと、エスプレッソ アフォガード フラペチーノのトールサイズを一つ。でいいです」


『かしこまりました。前にお進みください』


『コク』『ヴォォォォ』


「エスプレッソ アフォガード フラペチーノトールサイズ1点で640円になります」


「650円でお願いします」


「10円のお釣りです」


フラペチーノを受け取り、車を発進させ、店を後にします。


飲んでみると少しほろ苦く、オトナな感じがして美味しいフラペチーノでした。


その後、車を走らせること数十分。グローバル本社に到着しました。


「西園寺さんですね。こちらへどうぞ。」


受付を済ませ、会議室へと通されました。ここで本日、TS講習会が行われるのです。


「西園寺くん、君の席はここだ」

「はい、ありがとうございます」


机と言っていいのか、テーブルというのか、わかりませんが水の入ったペットボトルが置かれていました。なんだか、国会の会議をやっているような気分になってしまいました。


3時間ほど講習を受け、月に一度の講習会は終了しました。


「バコ」私はZのドアを開け、乗り込みます。時刻は午後1時7分、時間がたくさんあって、これから何をしようか迷ってしまいます。家に帰るのは勿体無いですし、どこかでお買い物でもすることにしました。「コク」「ヴォォォウウウ」「コク」「オオオオオオオオ」



向かったのは『SHIBUYA109』です。お洋服などを見たかったこともあり、車ではありますが、ここに行きました。中に入ると、まず向かったのはACLENTです。ここのお洋服はとっても可愛くていつも買っています。今日も3着買ってしまいました。見るだけと思ったのに。


そのあと一度家に帰り、今度は電車で最寄り駅の新小岩駅から秋葉原へ向かいました。


時刻は夜の9時過ぎ、やってきたのはGiGO秋葉原3号館。ここでいつも『湾岸ミッドナイト6RR+』をプレイしています。そして、今日もやりにきたのです。


やはり盛り上がっていますね。


「『ゆずれもん』さん、こんばんは」


この人は常連の『みっく』さん。常連のプレイヤーさん同士ではプレイヤーネームで呼び合うのが普通になっているようです。この人はFCをメインに使っている人で芋Sです。


私のメインはもちろんRZ34です。階級は虹Sですね。サブ車にR34GT-Rを使っていますが、こちらも虹Sとなっています。まだ芋Sには到達していません。色はどちらも白です。


ゲーム機自体は交代制になっているため、並んでいるとようやく自分の番になりました。

そして小一時間ほど乱入対戦をしていると徐々に人が減ってきていることに気づきました。


時刻は夜の11時13分。閉店時間が迫っていたため、人が減ってきていたのです。


「ゆずれもんさん、この後は時間あるかい?」

「ありますよ。どこかやってる場所を探してたところです」


こちらの方は『@フィオS』さん、私の高校の先輩です。


「新宿に1店舗深夜営業をしているゲーセンがあるみたいですよ」

「じゃあそこに行ってみるか」



『@フィオS』先輩のクルマに乗せてもらってそこのお店に向かいます。



今日はまだまだ家に帰るつもりはないです。













































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