第42話 3FPS
翌日――。
昼休み。
1年1組はざわついていた。
「アイシャ様だ……」
「生アイシャ様……やべえ……お美しい……」
「おい、お前……ファーストネームで呼ぶなんて不敬だぞ……!」
アイシャ・イクリプスが来ていたのである。
ユキが編入した初日以来の来訪である。
その目的は……、
「ユキ、聞いたぞ。野外演習で……」
野外演習でトップの成績を取ってしまったユキを祝福するためであった。
……のだが……、
「っっ……!?」
アイシャはユキを一目見て、言葉を失う。
「ゆ、ユキ……えーと……その……その付帯物はなんだ……?」
「え、えーと……」
「イクリプス様、こんにちは」
アイシャが付帯物と称した……ユキの左腕に腕を絡めている女子生徒……ルビィ・ピアソンがアイシャに挨拶する。
「ぴ、ピアソン……な、何を……している?」
「何って別に……好意がある相手に、好意を示しているだけですが……」
「っっっ……!」
「いやぁあ、まさかルビィ嬢がここまで積極的とは思いませんでしたなー」
オーエスが他人事のように言う。
「えーと、イクリプス様、何か問題でもございますか? リバイスくんは別にイクリプス様の所有物というわけでもないですよね?」
「っっっ……そ、そうだ……そうなのだが……」
アイシャはぐぬぬとなるのであった。
◇
放課後――。
ユキは、もはや完全に日常と化した研究開発室に足を運ぶ。
普段であればオーエスと共に行くことが多いのだが、今日はオーエスが用事があるということで、一人で向かう。
(あ……)
今日は、冷蔵倉庫の検証結果をまとめる日だったな。
そう思い出し、ユキは冷蔵倉庫の方へ向かう。
……
冷蔵倉庫に着く。
すると、そこには、珍しくアイシャが先に着いていた。
「……こんにちは、アイシャ様」
「あ……うん……」
(……)
心なしか普段より少し反応が薄い気がした。
「えーと、先に始めちゃいましょうかね……」
「うむ……」
……
「うむ……あれからしばらく経ったが、しっかりと冷えている。これなら十分に実用に耐えうるな」
「はい」
冷蔵倉庫の検証の結果は上々のようであった。
まぁ、やはり普段よりアイシャは少し覇気がない感じではあった。
「…………」
(…………)
「…………」
少し沈黙が流れる。
アイシャはやはり少し寒いのか、腕をさすっていた。
「……アイシャ様」
「……なんだ?」
「これ、どうぞ……」
「……?」
ユキはモコモコしたベストのようなものをアイシャに渡す。
「……えーと、これは……?」
「ちょっと着てみてください」
「う、うむ……」
そう言うと、アイシャはそそくさとベストを着込む。
「……!」
そして、ハッとするような顔をする。
「こ、これは……!」
「はい……冷蔵庫の開発の合間に、ひそかに開発していた魔法具をつかった〝電熱ベスト〟です。……ほら、アイシャ様、寒が……じゃなかった、その……冷蔵倉庫は冷えますからね」
「っっ…………」
アイシャは一瞬、俯くように沈黙する。
そして……、
「全く……君の時間は有限なのだから、こんな一個人のために、その貴重な時間が使われるべきではないのだよ……?」
「あ、はい…………すみません」
「でも……」
「……?」
「ありがとう……ユキ……大切にするね」
「っ……!」
アイシャは目を細めて、穏やかに微笑む。
その光景はなぜだか切り取られたように映って……
世界が3FPSくらいになったような気がした。
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【あとがき】
こんな趣味に走った作品をここまで読んでいただきありがとうございます。
もしよければ「★で称える」の投入をご検討いただけると幸いです。(すでに入れてくれている方、本当にありがとうございます!)
また下記の自作品を宣伝させてください。
辺境スローライフものです。
マイペースにものづくりする点は本作に共通しているので楽しめるんじゃないかと思います。
是非、見てやってください。
『上司に怠慢と言われたので異世界転居します。騙され森の家買ったけどスキル『モデリング』で森林開拓してたらいつの間にか神獣達に愛されてた~異世界セミファイア生活~』
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