第20話 カウンターの利用

 その後、研究開発室に現れたオーエスも交え、まずはギリギリ魔法補助具が格納できるくらいの大きさ……ランドセルくらいの大きさの魔法瓶での試作品プロトタイプを作成する。

 時間がなく、十分な検証を行えなかったが、明らかにこれまでより弱い出力で、高い保冷効果を得られている感覚があった。


 夜になって「また明日」と言った約束を果たすかのように、アイシャが研究開発室に来てくれた。


 今日は秘書のスパ・ゲッツェコードもついてきている。

 どうやら二日連続、夜を平民と過ごした(いかがわしい意味ではない)という事実が許容できないということらしい。


 ユキはスパ・ゲッツェコードの鋭い視線を感じつつも、魔法瓶のような断熱効果の高いハードを作成するというユキとソレハのプランを説明する。

(スパ・ゲッツェコードは全く興味がないようで、聞いていなかった)


 アイシャもそれに賛同してくれ、必要な資金調達は行うと言ってくれた。


 そこからは地道な試作を繰り返す作業であった。


 ソレハとオーエスがハードの試作をしてくれた。

 サイズや形はひとまずユキの前世の記憶である冷蔵庫を参考にした。


 二週間程度で一旦、ハードの試作品が完成した。

 ハードが完成したらば、今度はユキの出番ターンだ。

 適度な冷却の強さと長時間稼働の両立を実現する。

 そのためのちょうどいい魔法出力となるよう魔法補助具の魔法論理マジック・ロジック調整チューニングしていく。


 (まずは……〝見栄え〟を良くすることを考えてみるか……)


 以前、ユキが用務員の先輩であるジェイソンに絡まれて、魔法による決闘を行った。

 その時に使用した護身用魔法補助具がまさにそうであった。

 出力される魔法の〝見栄え〟を良くすると、なぜか設定値の限界を超えることができる性質があった。

 

 (うーん、そうだな……)


 ユキはどんな風に見栄えをよくするか考える。


(冷気が放射状に、渦を巻くように出されるようにしてみるか……!)


 そう思い立ったユキは、まず弾の射出時間と射出間隔を変更する。

【射出時間=5秒】【射出間隔=0.5秒に1回】


 これで5秒間、0.5秒間隔で計10発の冷気が放たれるようになった。

 しかし、単純に弾数を10倍にすることはできないので、大きさと威力を調整する。

【大きさ=2→1】【威力=0.5→0.1】


 これで、大きさ×威力だけを見ると、変更前後で変化はない。


 ただ、これだけだと、杖の先で、冷気がついたり消えたりと点滅だけだ。


 そこで、まず速度を設定する。

【速度=0→0.1】


 攻撃に使うわけではないので、速度はゆっくりにする。

 しかし、これでもまだ杖からゆっくりとした冷気が放たれるだけ。


(放射状を実現するために、重要なのは発射する角度だよな……えーと、水平方向の角度を……)


 ユキは弾が発射させる角度を調整する。

【水平方向の角度=36°×発射番号】


(これで、弾が射出されるたびに、前回の弾よりも〝36°〟だけ角度をずらして射出できるはずだ)


「さて、これでどうだろうか……」


 ユキは恐る恐る試してみる。


 すると……、


「おぉー!」


 意図した通り、ぐるりと円状に、放射を描くように弾を射出することができた。


 が、しかし……、


「ん……? あ、やべ……」


 一点問題があった。


 杖を横たえるように置いているのだが、弾が放射状に弾が放たれると、杖の柄に向かって発射される弾が発生してしまっていた。


(逆流したら下手したらぶっ壊れる……)


 ユキは慌てて、180°の時だけ、冷気が出ないように設定する。


「ふぅ……危なかった」


 ユキは額の汗をぬぐう。


(でも、おかげで、すごくいい感じになった。放射状に冷気が出されるのはなんだか見ていて楽しいな……)


 そんなことを思いつつ、満を持して稼働時間の検証を行う。


 ……結果。


(よかった……うまくいった。やっぱり見栄えをよくすると同程度の出力でも稼働時間が延伸する……)


 ユキの試みはひとまず成功した。

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