第6話 バキバキ処女、土下座をしてなんとかヤらせてもらおうとする
「――はい、私はバキバキ処女です」
しばらくの沈黙のあと、外ヶ浜凛々亜はまるで死を覚悟したかのような表情で顔を上げ、潔くそう言い放った。
なんだこいつ、おもしれーな。
「……ドン引き、だよね?」
「……まあ、俺としてはクラスの目立つグループにいる外ヶ浜さんが処女だってのはちょっと意外だったかも」
「いいんだよ……そんなビブラートに包まなくても……」
「オブラートだよ。俺の声そんなに揺らいでないよ」
いかにも遊んでいそうな女子が実はめちゃくちゃウブでかわいい。
そんなのは元の世界での創作物ではよくある。男心をくすぐるシチュエーションだ。
だがここは貞操逆転世界。
今の外ヶ浜さんを元の世界的に表現すると、ヤリチンと噂されているカーストの高い男が実は童貞だったという感じになる。
カーストが低い俺からしてみたら、そんな雲の上のことは割とどうでもよく感じる。
ただ、カーストの高い連中のなかで過ごす外ヶ浜さんにはかなり居心地が悪いのかもしれない。
「まあでも、別に処女でもいいんじゃないの?」
「誠に遺憾です! 平山くんが良くても私が良くないの! だって私がいつも絡んでるメンツ見てみ!?」
「だから俺は平川です」
「ご、ごめんごめん」
「ええっと? 外ヶ浜さんが絡んでるメンツって、
「そう、それがいつもの四人。そしてその四人の経験人数全部足すと三十人になる」
思わず「ワァオ」と俺は驚く。
平均値で言うと七人と少し。外ヶ浜さんが大幅に下げているので実質平均値は十人だ。
統計学的には外ヶ浜さんのゼロ人というデータは外れ値過ぎて弾かれてもおかしくない。それくらいの異端児。
……まあなんというか、この世界の女子って本当にお盛んなのね。
「そんな経験豊富なみんなの中で私だけ処女とか間違いなくヤバいの。バレたら絶対ハブられる……」
「んで、処女のくせにそうではないと見栄を張っていると……」
「うん、まあ端的に言うとそう」
「ちなみにいつものメンツには経験人数何人って言ってるの?」
「……十二人」
「だいぶ見栄張ったなあ!」
怒られるかと思ったのか、外ヶ浜さんはシュンと縮こまる。
馬鹿だなあとは思うものの、俺は別に彼女を責める気はない
「わざわざそんな人間関係維持のために見栄なんて張らなくてもいいのに」
「平山くんには私の苦労がわからないからそんなこと言えるんだよ!」
急に大きな声で外ヶ浜さんがそんなことを言うので、俺は「平川です」のツッコミをすっかり忘れてしまっていた。
「わ、悪かったよ、デリカシーのないこと言ってごめん。でもそれなら適当に男を引っかけてやっちゃえばいいじゃん。外ヶ浜さんなら簡単でしょ?」
「そ、それがですね……あんまり男子と関わり持てなくてですね……」
「ええ……そんなナリして奥手なの?」
「うるさいなあ! それは私が一番気にしてるの! 昔から男の子と上手く仲良くなれなくて、だからその……有り余る熱を発散するために……」
「机でしてたってわけか」
「それ! 言わないようにしてたのに! 誠に遺憾です!!」
「そんなに朝の俺でムラムラしたの? 大したことしてないんだけど」
「そうよ! 言っちゃ悪いけど今日の平山くん、ヤバかったからね! 私の推しは藤崎くんみたいな高身長細マッチョのはずなのに、ちょっと心揺らいだもん!」
隠すべきことをうっかり全部言葉にしてしまうあたり、外ヶ浜凛々亜はおもしれー女である。
なるほど、彼女の好みは晴人のような男なのか。
「へえ、晴人みたいなのがいいんだ」
「まあその……藤崎くんは私の性癖ど真ん中なので……正直エロすぎて手が出そうだからいつもギリギリで踏みとどまってる……」
「危ねえなおい!」
「しょうがないじゃん! この世の女子で高身長細マッチョが嫌いな人なんていないんだからしょうがないでしょ!」
高身長細マッチョのことを元の世界で言うスレンダー巨乳みたいに言うな。
晴人はのんびり屋で皆に優しい。だがあんまり恋愛のことは得意じゃなくて奥手なところがある。
元の世界の女子に置き換えると、「スレンダー巨乳の大和撫子」ってところか。
……うん、モテるね晴人。この世界の超優良物件だよ。不動産収入だけで生活していけるぜ。
「なるほどね。それで……外ヶ浜さんは晴人みたいなヤツとヤりたいなーと毎日思いながら処女をこじらせていると」
「こじらせ言うな! ……そりゃ、処女なんて卒業しておくに越したことはないよ? でも私、実はまともに男子と話したこともないし、手が触れたら多分ドキドキして頭ではの中真っ白になるだろうし……」
「難儀だな……てか、よくそれであのグループにいられるな」
「ノリとテンションの高さには自信あるので」
めちゃくちゃキッパリと外ヶ浜さんは言い切る。
その潔さに、俺はまたため息をついた。
「そこで折り入って平山くんにお願いがあります」
急に表情を変えた凛々亜が真剣な声色でそう言う。
泣いたり笑ったり真面目になったり、こいつは忙しいやつだ。
「な、なに……? あと俺、平川ね」
「そ、そんなに難しいことじゃないんだ……けどちょっと無理なことかもしれなくて……」
「なんだよ、もったいぶらずに早く言ってみなよ」
すると外ヶ浜さんは息をすうっと吸い込んで、再び土下座をしながら大きな声で言い放つ。
「平川くん! 一回でいいからヤらせてください! 私に処女を捨てさせてください!!!」
元の世界では考えられないようなセリフを、考えられないような相手から言われてしまった。
貞操逆転世界だからこういうこともあるかもしれないと期待はしていた。
まさかすぐに起こるとは思っていなかったが。
しかしこれはクラストップカーストの美少女である外ヶ浜凛々亜とヤるチャンス。下手をこくわけにはいかない。
俺は失敗しないよう慎重に言葉を選んで、土下座している外ヶ浜さんに言葉を投げかけた。
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