迷い猫と迷い人、心を探すペット探偵物語

 粗野アレックスとレベッカ――まるで真逆のようでいて、どこか同じ“孤独の温度”を抱えた二人が、少しずつ歩幅を合わせていく物語ですね。荒っぽい口調の奥に眠るアレックスの優しさと、控えめなのに誰より強く誰かを想えるレベッカ。

 この物語が魅力的なのは、「優しさ」が一直線ではなく、時に傷をつけ、時に救いとなる“生きた感情”として描かれているところだと思うんです。登場人物たちの影は決して軽くないのに、ふとした瞬間に見える光が柔らかくて、そのコントラストが癖になります。

 迷子の動物を探す「ペット探偵」という職業もまた魅力的で、失われたもの、置き去りにしたもの、自分の中の声――そういった“見つけるべき存在”が、この世界にはたくさん散らばっているように思えてきます。

 優しさに触れる痛みも、すれ違う切なさも、やがて花のように咲いていく――

 そんな物語が好きな方に、そっとおすすめしたい作品です。

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