モキュメンタリー、いわずもがな「フェイクドキュメンタリー」と呼ばれるジャンルです。
本作はその中でまた新しい切り口を見せてくれるものとなっていました。
扱われているテーマは『天使』。
ある時に、『天使』が落下して死亡したという噂が流れる。その天使は落下の衝撃で酷い状態になっているため、正体はよくわからない。
関係者たちから話を聞く中で、天使にまつわる不穏な話、不穏な人物の動き、または現実的ななんらかの解釈などがいくつも出てくる。
証言をしている人々の意識は、一体どこまでが正常なのか。どこまでが信頼できるのか。
本作を読んで、モキュメンタリーというジャンルの可能性を見た気がしました。
モキュメンタリーは通常の物語とは違い、「物語の全体像」を解き明かしてくれる主人公は出てきません。その代りに、「先入観や固定観念や偏見に従い、歪んだ解釈をしてくる様々な市井の人々」の証言を見て行くことになります。
理性とは別の、ある種の思い込みで真実を掴んだと思い込む人々。その人々が口を揃え、『天使』というものを紐解いていく。
果たして、真実はどこにあるのか。
ファンタジーや宗教の中でのみ語られる単語が、モキュメンタリーという手法によって「現実を侵食する謎の事象」へと変貌していく。
真実には近づけない人々。その間にそっと忍び込む、「本当に危険な何か」の存在。
最後まで読んだところで、「彼ら」がどんな末路を迎えたのか、静かに想像を巡らせることになりました。
果たして、真実はなんだったのか。彼らの証言を参考にしつつ、是非とも答えを出してみてください。