17キス♡蜂蜜と美肌
「さてと……忙しくてちゃんと考えるヒマがなかったけど」
机に向かって棚に置いてあるファイルを取り出して中から星マークをつまんでくるくると回してみる。
スパリゾートルパイアンズにいた子どもたちの首についていた六芒星のシートが数枚。
「聖王都で流行している子どもたちの遊びかあ。
諜報部の報告書からすると、魔法適性が増えるっていう噂のせいで流行り始めて間もないのに広まり始めているんだよね」
この国の民はほぼ魔法を学んでいる。
魔法が使えるということは魔導科学が発展しているこの聖王都ではとても優遇される存在だ。
火や水、風など個体によって変わる魔法適性。
得意な魔法が分かればいいんだけど、適性を調べる方法は確立されてない。
魔法学を学ぶ中で適性を見つけられる人もいるけど苦労する人がほとんど。
10歳までの子どもの教育は義務化されているけど、それ以降は経済的な事情で魔法学を十分に学べない人もいる。
そして魔法力がゼロという特殊な存在もいる。
わたしの養護施設で保護している子たち、実はそんな子が多かったりする。
魔法力がゼロというだけで育児放棄されることがあるからだ。
そんな子たちがこの世界で生きていくのは大変なんだよ。
「適性が増えるなんてことがほんとなら、適性の判明もできる大変なアイテムってことだね?
魔力が付与されているマジックアイテムってことは間違いないけど、どういうものかまでは専門家の協力が必要。
流通ルートは要調査。
調べるのに時間がかかるってことだけど……
諜報部も忙しいし、短い時間でよくこれだけ調べてくれました!
明日は特にこれといった公務はないし魔法省に持って行ってみようかな?
こういう時にサクッと手伝ってくれる仲間が身近にいたらいいんだけどなあ」
そんなことをぶつぶつと呟きながらバルコニーに向かう。
城下を見下ろすと街の灯りが瞬いて見える。
手にした六芒星のシート越しに眺めるとまるで星空のように感じる。
みんな家族であったかい食事をしてるのかな?
なんてことを考えながらしばらく佇んでいた。
「この六芒星……首につけてみようかな?
わたし無敵だし、きっと問題ないよね?
寒っ!」
初夏とはいえ夜風はまだまだ涼しい。
「体があったまる生姜紅茶でも飲もうっと♪」
給湯室に移動してケトルに水を注ぐとスイッチを入れる。
待っているとポコポコとお湯が沸いてくる。
魔導科学はほんとに素敵。
生活用品も魔道具のおかげでこんなに簡単にお湯が沸かせる。
小洒落たティーポットに茶葉を用意してお湯を注ぐ。
ほんとはティーカップにもお湯を注いであっためておくものだけど、めんどい作業は全部省略。
簡単に飲めればいいのよ。
蒸らすくらいはするけどね。
ティーカップに紅茶を注いで薄切りにした皮付き生姜をとぽんといれて蜂蜜を溶かして出来上がり♪
一口だけこくんとのどを鳴らす。
うん、美味しい♪
いかにも体があったまりそう♪
「ふう」
一息ついてティーカップを手にしたままゆっくり三人がけのソファの真ん中に腰掛ける。
「ごふ」
ん? ごふ?
おしりに変な感触がするし、ソファがあんまり柔らかくない。
「おかしいなあ?」
ちょっと体をずらしてから強めに座り直してみる。
「ぐっふ!」
「ひゃあ!?」
ソファから声がした!
びっくりして立ち上がると紅茶がちゃぷんとこぼれそう!
振り返ってソファを見る!
……なんだかでこぼこしてる。
「よくわたしがここにいると分かりましたね?」
「リーリエ!?
いや、分かってなかったよ!?」
ソファの座面をめくると中にリーリエが寝転がってた。
「わたしはあなたのお胸に座ってたの!?」
「つぶれるかと思いました」
「ぽんこつ!
そこでどうやって暗殺しようと思ったの!?」
「下から猛毒ダガーでえいっとしようと思ったのですが」
「ですが?」
「その……うっかりソファの中が気持ちよくて寝てしまって……」
「ソファの中は気持ちいいんだ!?
ほら、手を貸してあげるから立って」
「はい」
「よいしょっと」
「ありがとうござ……」
リーリエが立ち上がりざまにほっぺにちゅっと♪
ちゅ〜したところに魔法陣が現れて光ると消えた。
「……やられてしまいました」
ほっぺをさするリーリエがかわいい!
「へへ〜♪
今夜もわたしの勝利だね♪
生姜紅茶を淹れてあげるからソファを直して座ってて♪」
「生姜紅茶……はい」
あら? いつもよりも素直じゃない?
「いただきます」
紅茶の香りを吸い込んだリーリエが一口こくんとのどを鳴らす。
「……美味しい。
あったまります」
「でしょ〜♪
茶葉も蜂蜜も隣国から献上された高級品なんだよ。
農家さんが丹精込めて作ってくれたゴールデンチップスに、貴重なマヌカの花からミツバチちゃんたちが集めてくれた単花蜜なの♪
生姜は城内の畑で採れたものだけど。
この組み合わせがいいかは知らないけど香りも味もいいでしょ?」
「はい……とっても」
リーリエのために腕によりをかけて正しい手順で紅茶を淹れました♪
お水は軟水だし、ティースプーンでしっかり計量してるのさ!
ちゃんとソーサーも用意したしね。
つまり自分用に淹れた時は超てきとうだったり♪
「ふふ♪
美肌効果に血行促進にデトックス♪
リーリエがもっとキレイになっちゃうね♪」
「…………」
またそっぽ向いちゃうし。
どんな表情してるか見たい!
あれ?
リーリエったらティーカップの持ち方が違う。
ティーカップのハンドルに指を入れて持ち上げてる。
正しい持ち方は人差し指、中指、親指でハンドルをつまむもの。
薬指と小指はカップのハンドル部分に添える感じ。
公爵令嬢ともあろうものがこんな簡単な作法を知らないなんてないよね?
暗殺なんてやさぐれたことばっかりしてるからかな?
社交界にも出席してないのかも?
「ねえ、リーリエ?
暗殺ってわたし以外にもするの?
人を殺したことがあるの?」
「……いえ。
しませんし、一度もありません」
「それって暗殺者として逆にどうなの?」
「ぽんこつではありません」
「まだぽんこつって言ってないよ?」
もしかして自分でもぽんこつ具合を気にしてたりして。
「でもそれなら向いてないからってクビにされちゃうんじゃないの?」
「王女の暗殺はわたしだけの使命です」
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