3キス♡美少女と死刑

「王女サラよ。

死んでしまうとは何事か。

世話をかけるでない。

眠いのにめんどくさいです〜」


人をダメにしそうなクッションに寝っ転がってる!

涙目でむにゃむにゃあくびしてる!

むっちゃくちゃ髪のボリュームが多くて、乳白色のひらひらいっぱいエンパイアドレスでスタイル抜群な金髪青眼の美少女が今にも寝ちゃいそう!


「ダメダメ感がかわいい!

いや、知らないし!?

めんどくさいって言った!?

わたし、死んだの!?

公務も勉強も終えて今日も疲れたなあ。

もう寝よっと。って、普通にベッドに入っただけなんだけど!?」


「そなたは死ぬ運命にあらず。

死すべき時に死す定め。

それまで死すること能わず。

それが彼のものとの定めた証。

天命が尽きるまで生きよ。

ふわ〜」


「なんか無視してそれっぽいこと言い始めたけど気だるそう!

せめてこっち向いて話して!?」


あくびがふわふわしててかわいいけど。


「いくつかいいものあげたから?

まあ、がんばって?

おやすみなさ〜い」


ゆるゆるな笑顔で消えてく!


「待って! お友だちから始めませんか!?」

「ふわ? お友だちです?

それもい……」


言ってる途中で消えた!


そんなわけでね?

どういうわけか。

速攻、復活!

傷も消えていたのさ!




「生きてる!」


ガバッと上半身を起こそうとしたけどできない。

ヘソだしベストにショートパンツの美少女がわたしに馬乗りになっていたから。

美少女が不思議そうに首を傾げていた。


「うそ! きゃわいい〜〜〜!

わたしの好みにど真ん中!

結婚してください!」


初めてのプロポーズ!

胸がドキドキ。

心臓が激しく高鳴っていた。

なんだかずっと会いたかった人に会えたような気がする!


「えい」


「えいじゃない!

無表情で心臓目掛けてダガーを刺すな!」


「あれ? えい」


「刺すな!

って、刺さってない!

なんで!?」


「知りません。

ですが死んでくれないと困ります。

えいえい」


「だから刺すな!

ネグリジェがボロボロになっちゃうよ!?」


「なんで死なないんです?」

「なんでだろう?」


二人でおんなじ方向に首を傾げていた。


「姫様? いかがされましたにゃ?

にゃにゃにゃ!?

ニャイフ!?

曲者! 曲者にゃ〜〜〜!!!」


「ニャイフじゃありません。ダガーです」


いや、そんな細かい訂正を真顔でしなくていいからね?


わたしの大声に気付いて侍女部屋で休んでいたパジャマ姿のミンケちゃんがやってきたわけよ。

当然、大騒ぎになるわけで?


わたし直属の夜番の近衛騎士ちゃんたちが、ベッドに乗っているわたしと美少女を取り囲んでいた。

みんな綺麗な子たちばかりなのよね。


「近づいたら殺します」


ダガーをわたしの首筋にあてるのはいいんだけどね?

食い込んでるよ!?

でも、感触はあるけど痛くないなあ?


「サラ!?

これは一体どういうことだ!?」


「あ、パパだ。

やっほー」


「パパだじゃない、お父様!

だが、パパの響きも捨てがたい!

やっほーじゃない!

話し方が庶民か!

ダガーを突きつけられて、そんな笑顔でいるってどういうことだ!?

お前、そんな性格してたか!?

お淑やかで怖がりだったろう!?

もしやショックのあまりおかしく!?」


「えー。そんなこと言われても。

確かに死ぬ前はもっとこう、清楚で淑女な感じでいたかもしんないけどさ?

なんか復活したらどうでもいいみたい?

これがほんとのわたしだよ?」


「そうか……本当の自分でいられることの素晴らしさが身に染みる……

って、よく分からん!

それはともかく!

そこの狼藉者よ!

姫を解放するのだ!」


「嫌です。

そんなことをしたら殺されてしまいます。

姫を殺されたくなかったらそこを通してください」

「おのれ! 騎士たちよ、逃がしてはならぬ!」


わたしの首にダガーを突きつけるかわいい暗殺者。

騎士ちゃんたちもこんな状況では迂闊に手は出せない。

なんと言ってもこの国の王女であるわたしが目の前で殺されようものなら厳罰じゃ済まないし。

こう着状態だね。

だからっていつまでもこんな状況で甘んじてるのは嫌だし?


「は〜い。パパ、わたしに提案があります!」

「サラ!? 提案とは!?」


「この暗殺者に一目惚れしました!

この美少女をわたしのお嫁さんにください!」


パパ? 騎士ちゃんたち?

暗殺美少女まで?

みんながわたしのこと変な目で見てる。

なんで?


「前からおかしな娘だと思っておったが!

なぜにそうなる!?

そんなの許せるわけなかろうに!

愛しい娘を襲う狼藉者など死刑に決まっとろうが!」


「死刑なんて絶対にダメだよ!

そんなことしたらわたしも舌かんで死ぬから!」


「アホか! 暗殺者のために舌をかむ姫がどこにいる!?」

「ここ」

「いた!」


舌をベーっと出して自分のほっぺに指をぷにっとあててみたら、パパが顔に手をあてて天井を仰いでる。


「結婚を認めてくれないと舌かんで死ぬからね!」

「どっちも認められるわけなかろう!」


不毛な押し問答が続くこと小一時間ほど。

騎士ちゃんたちも剣を構え続けるのがしんどくて床に剣先を沈めてる。

盛大な親子ゲンカに付き合わせてごめんね?

わたしもパパも言い合いに疲れてぜいぜいはあはあだよ!


暗殺美少女はというと、わたしの首筋にあてた刃をギコギコと右に左に動かして、なんで傷がつかないのかを不思議がっているようだった。

たゆんたゆんが揺れて見応えたっぷん♪

横に切る切断が目的のナイフと違ってダガーは刺突を目的としてるからギコギコしてもあんまり切れないんじゃない?


それにしてもこんな状況なのに一番冷静だね!?

まあ、わたしも死なないのが分かったから慣れたけど。

騎士さんたちも最初は心底ビビっていたみたいだけど、もう訳が分からないって感じでいる。

パパは言い合いに夢中で気づいてないかも?


暗殺美少女を死刑にされず、わたしのお嫁さんにもらう。

う〜ん? 一体どうしたらいいんだろう?


「ねえ? あなたの名前は?」

「リーリエ・コルニクスです」

「リーリエかあ! かわいい名前だね!

あれ? 名前なんて言っちゃっていいの?

身バレするよ?」


「は!?」


「何を始めて気づいたみたいな顔してるのかな?

ぽんこつがすぎる〜♪

わたしはラーサラ・ルパ・ベルトール。

って、知ってるよね。

サラって呼んでね!」

「嫌です」

「食い気味! 速攻嫌がられたし!」


「コルニクス? 公爵家のものか!

んん? よく見れば……コルニクス家の令嬢ではないか!」


「ふ〜ん? そうなんだ?

社交界とか仮病でほとんど出席したことないから会うのは初めてだね?

でも貴族令息令嬢名簿は見たことあるから知ってるよ。

わたしと同じ日に生まれたんだよね?」


「やっぱり仮病だったのか!?」

「てへ♪ バレちゃった♪」

「てへ♪ でないわああ!」

「えいえい」


たゆんたゆんなお胸を揺らしながらギコギコから刺す刺すに戻ってる!

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