鬼ヶ島
ほぅ……人間、それに妖精だと? 我らが【鬼ヶ島】に一体何の用だ?」
「俺達と一戦おっぱじめようってかぁ?」
鬼に会いに行くともなればキチンとした服装で赴かなければならない故、簡易的だが皮服を身に纏い、供回りに数名の妖精を連れていざ出発したのよ。
まぁでもどうせあの玉藻前が紹介したものだしと、実はなんて事のなかったという前列もあるしと、向かった訳だ。
ここは【鬼ヶ島】――――へ向かう為の港。
そこに居たのは完全に裏社会で生きてるような鬼だった。
(…………凄い怖いヤクザのような風貌の鬼なんだが?)
(なんか凄い怖いであります!!)
いや、完全にヤクザだよね。
ギャングか?
もしくはマフィアか……。
「んん゛っ、俺は【スノーフォックス】のトグ。君たち【鬼ヶ島】の者と国交を開かないかという打診の為にやってきたんだ」
俺がそう言うと鬼たちはお互いの目を見て、そしてコソコソと話始めた。
聞こえたのは「おい、どうするよ」とか「これ俺達の一存で決めちゃ駄目じゃないか」という言葉だった。
俺はチラリと鬼達の持ってる武器に目をやる。
ちょっと青みがかってるから……これは銅だな。
よしよし、まだ鉄の導入は無いようだ。
「それに俺達だって手ぶらで交渉してる訳じゃない……これなーんだ」
俺はおもむろに持ってきた鉄鉱石を見せびらかす。
それまで頭を掻いて悩んでた顔が一気に吹き飛んだように、鬼達は驚愕した。
「そ、それは……!!」
「おい、早くこいつらを頭に合わせるぞ!!」
(これは上手く行ったって事なのかな?)
(どうやら鬼達にとって鉄は貴重なものらしい)
俺達は鬼達に急かされながら舟に乗ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【鬼ヶ島】に上陸した俺達は島の造形に感嘆した。
黒みがかった土と石に、山の頂点には角が生えたような出っ張りが二本あり、これそのものが鬼のような島になっていた。
それに何より驚いたのが……。
「ここ火山じゃねぇか!!」
何か熱いと思ったら、ここは火山の島だった。
ここで鬼達は武芸を励んだり銅を打ったりして過ごしている訳だ。
「おい、お前ら大丈夫か?!」
「どうした?」
後を振り返ると鎧が溶け妖精達がヘナヘナになっていた。
「そうか、ここ熱いから……そこのお前、妖精達を港に戻してやってくれ、謁見は俺一人で行う」
ここに雪の妖精を連れてきたのは失敗だったな。
寒さには強いが暑さには耐えれないんだ。
「相分かった」
「なら、俺が頭に連れていこう」
これで、ここに居るのは目の前の鬼と俺だけになったな。
よくよく見ると、こいつマジでマッチョだな。
無茶苦茶鍛えてるように見えるが、港に連れてった鬼も中々な筋肉してたな。
鬼ってのは皆マッチョなんだろうか。
「何だ、そんなジロジロ見て」
「失礼、鍛えてるなと思ってつい」
「俺は戦士の端くれ、もっと凄い奴なんてこの島にいくらでも居るぞ」
「いいね、名前は?」
「名前なんて大層なものは無い。名前があるのは頭のような強き者だけだ」
そんな設定があったのか。
そういえば雪の妖精達が名乗って無かったのは、そういう文化のせいなのかな。
「ほら、行くぞ。頭を待たせると不味い」
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