第18話

「もう1回言わせて。助けてくれてありがとう」








そう言うと、七瀬君は顔をぐしゃぐしゃにして俯いた。



それからわたしの手をゆっくり離して、空に置く。









七瀬君は、わたしの横を小走りでかけていった。ハッとなって振り向いたころには、七瀬君は角を曲がって見えなくなっていた。









ひとり残された廊下。床に小さなシミができた。指先に残った七瀬君の体温に切なくなって、わたしの目からはまた、ぽろりと涙が零れ落ちた。





七瀬くんの手は、どんなものよりもあたたかくて、優しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

七瀬君が優しい理由。【完】 北葉 @kitababba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ