第16話
「七瀬君が助けてくれなかったら、どうなってたかわかんない」
「でも俺、いっぱい殴ったし」
焦ったように早口になる彼の言葉を、わたしはじっと待つ。何か伝えようとしてくれている。聞かなきゃ。わたしが聞かなきゃ。
「……昔からこうなんだ。歯止めきかなくて、やり過ぎる。気づいたときにはもう向こうは動いてない。昨日もそうだった。ごめんなさいって何回も聞こえたのに、止められなくて」
「……うん」
「痛かったと、思う」
「うん」
「……お礼なんて言われていいヤツじゃない、俺は」
みんなに恐れられて、1人で、1人きりでいつもいる七瀬君からは程遠い言葉だった。
はじめて聞く彼の声。それが紡ぐ言葉たちは、どれもとても切ない。今にも消えてしまいそうな七瀬君の両手を、わたしは自分の両手でそっと包む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます