第12話

「七瀬君は、優しいよ」



「実織、アンタ何言ってんの?」



「七瀬君、わたしのこと助けてくれたの」



「は?」



「昨日、そのオジサンにわたしが絡まれてたの、助けてくれたんだよ」










ざわざわと教室が再び騒がしくなる。友人が困惑した表情でわたしを見る。




近くにあった濡れ雑巾で七瀬君の机の上を擦る。消えていく化け物の字にほっとした。だけどこれだけじゃダメだ。わたしはまだ、七瀬君に伝えていないことがある。




友人のわたしを呼び留める声が聞こえた気がするけれど、それを振り切って教室を飛び出した。








七瀬君は生徒指導室にいる。早く行かなきゃ。助けてくれたんだから、わたしも彼を助けないと。

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