第6話

ぐいぐいと引っ張られる。踏みとどまろうとしても、ずるずる引きずられて動けない。怖い、怖い。怖い。嫌だ。





声が出ない。ひゅ、ひゅ、と音にならない悲鳴が喉につっかえて出てこない。




ガタガタと震える全身。目が熱い。恐怖で身体が竦む。






そうこうしている間に、ただでさえ狭い道からもっと小さくて暗い場所へと引きずり込まれようとしている。怖い。助けて、誰か。










ぎゅっと目を瞑ったときだった。お酒の匂いもタバコの匂いも、手首を掴む不快な熱も、一瞬で離れた。





「……え?」






あっという間に解放された身体。足の力が抜けて地面にへたり込む。

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