第5話

だけど、狭い小道だ。距離を開けてすれ違うなんてことできない。




がし、と腕を掴まれた。それと同時に漂うお酒とタバコの匂い。嗅ぎ慣れない匂いに頬が歪む。腕に食い込む爪が痛い。これは、誰の手?






「おじょうちゃん、こんな夜に1人じゃあぶないよ」







聞いたことのない、ねっとりした声。呂律のまわっていないそれに背筋が凍った。腕を振りほどこうとしても、力が強すぎてぴくりとも動かない。







「は、離してください」




「だいじょうぶ、怖くないよ。おじさんが一緒にいてあげるよ?コッチにおいで」




「や、やだ」




「ほら、こっち」

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