七瀬君が優しい理由。【完】

北葉

第1話

その日はいいことばかりだった。






お弁当には大好きな唐揚げが入っていたし、数学の授業で指されてもちゃんと答えられたし、クラスの女の子がお菓子を分けてくれた。




こんなに嬉しいことばかりでいいのかな?最後に絶望のどん底に突き落とされるようなことがあったりして。



その予感はあたった。あたってしまった。その日の最後の最後に行われた席替えは、わたしを容赦なく突き落した。






窓側のいちばん後ろ。日当たり良好、居眠りには絶好のポジション。




くじ引きで勝ち取ったその席は、前の席が七瀬(ななせ)君になったことによって一気に最悪になった。




七瀬君の近くの席の子は、みんな困ったような顔をしていた。あからさまに嫌そうにしている人もいる。




廊下側のいちばん前の席になった友人が、こちらを気にしてくれているのがわかる。口パクで「だいじょうぶ?」そう言ってるのがわかって、わたしはグッと親指を立てた。

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