第三章:真相

翔太はあることに気づく。


「このアパート自体が、“こちら側”と“あちら側”をつなぐ境界線になっている」


そして、“消える”のではなく、“入れ替わる”のではないか、と。


消えた住人は、ただ消されたのではない。


「もう一人の自分」が、向こう側からやってくるのだ。


そして、それはすでに始まっていた。


奈々は消えた。裕介も姿を消した。


残されたのは翔太だけ。


「これは、最初から仕組まれていたんだ」


彼は編集途中の映像を再生する。そこには、最初の取材の様子が映っている。


だが——。


画面の中に映る自分の顔が、微かに笑っていた。


カメラを覗き込んだその男が、画面越しにこう囁いた。


「お前は、もうこっちにいるんだよ」


映像が乱れ、暗転する。


カメラの前には、誰もいなかった。

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