第23話 空前絶後、前代未聞の同時多発テロ
「部室タコ星人事件」以来、私たちは、白金先生と協力しながら、安田の監視を継続した。
その甲斐あってか、何事もないまま文化祭も無事終了し、季節は晩秋を迎えていた。
余談になるが、文化祭では、「古墳時代の郷土」と題して、神楽坂弥生の実家の稲荷神社が実は古墳の上に建てられていたという発見も含め、学校近辺の古墳の分布についての研究発表をした。
こんな発表に興味を持つ人なんていないだろうなと思ったし、実際会場の教室は期間中閑古鳥が鳴きまくっていたのだが、意外にも市の教育委員会からお褒めの言葉とともに神社の発掘調査をしてみたいという申し出があった。
取り込み中でもあったので、弥生と相談して、発掘調査の方は丁寧にお断りをした。
「このまま何も起きなければいいよね。ようし、この調子で今週も監視、頑張るぞ!」
意気上がる私たちをしり目に、アリッサは何か言いたげに暗い顔をしていた。
そして事件は起きてしまった。
東急東横線、田園都市線、小田急線の首都圏の私鉄幹線三線の多摩川にかかる鉄橋が同時に爆破された。日本では前代未聞の規模の同時多発テロだ。
爆破が始発電車が走り出す前の時間だったため、不幸中の幸いで死傷者こそなかったが、復旧までには、早くとも数か月、おそらくは一年近くの時間を要する見込みで、首都圏の交通は大混乱となった。
それ以上にテロの恐怖が日本中を震撼させた。
同じことが交通インフラではなく、都会の真ん中の人の集まる場所で起きたら、多数の死傷者が出ることは火を見るより明らかだ。
警察の懸命の捜査で実行犯は特定され、過激派の活動家が全国に指名手配されたが、爆弾の出どころは杳としてわからなかった。
警察に対する非難の声が蔓延し、マスコミの報道がそれを煽った。
警視庁はテロ防止のための厳戒態勢を敷き、かつ人手の多いところへの外出の自粛を呼びかけた。結果、あのパンデミックによる緊急事態宣言の時のようにたちまち街から人が消え、経済は停滞した。
爆破された小田急線の鉄橋が私たちの学校の近くだったため、事件当日から臨時休校となった。
白金先生、アリッサ、神楽坂姫乃、私に蔵王権太郎を加えた五名が宇宙くんのマンションを訪れ、緊急作戦会議を行った。
アリッサはきっとこの事件が起きることを知っていたのだろう。
「うん、ごめんね。禁則事項なので言えなかった。私たちの時代では、今回の事件は11・27同時多発テロ事件として認識されているわ」
もしかして、またテロが起きるの?
「ううん、私が知っている大規模テロはこれだけ。もしまた大規模なテロが起きたら、その時は未来が改変され、私たちのいる社会や、私自身も消えてしまうかもしれないわね」
白金先生がいら立って、ドンと机をたたいた。
「それにしても、安田は完全に私たちの監視下だったし、過激派のアジトにも踏み込んで、爆弾なんて影も形もなかったのに。あんな爆弾、どうやって調達したのよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます