幕間:喜屋武宇宙の独白

 僕は、地球から約四光年離れたアルファケンタウリ星系の惑星の知的生命体が対地球人コンタクト用に生成したヒューマノイドだ。

 爆発的にその個体数を増殖させ、知的レベルにおいても急速な自律的進化を遂げている地球人を観察し、報告することが僕に課せられたミッションだ。

 

 僕は三か月前に、沖縄にある星系の秘密前線基地で生成され、東京にある風華学園高等部に転校生として送り込まれた。


 アルファケンタウリ星系には、僕を生成し知的た生命体が生息する第三惑星の他に、もう一つ同族の生命体が生息する第四惑星がある。

 元々は、第四惑星で発生、進化した生命体の一部が第三惑星に移住したらしい。長い年月を経て、それぞれが独自の進化をし、文化圏を形成しているため、考え方などにおいても、地球で言うところの国くらいの差異がある。

 第四惑星よりも温暖な第三惑星の方が、日本の沖縄のようにのんびりした気風ということが言えるかもしれない。


 地球は、知的生命体が存在する星としては一番近い。

 僕たちの惑星では、地球人の進化のスピードに脅威を感じながらも、将来的に友好通商できる方向に進化してくれればと、特に手を下さずに見守る方針である。

 一方で、第四惑星は、地球人の文明が自分たちに追いつくことがないよう、干渉してその自律的進化の速度を制限する方向で動いているようだ。


 方針が違えば、当然摩擦も起きる。

 僕の星系の生命体は、地球人と違って、紛争の解決の手段として殺し合うことはしない。ただ生成したヒューマノイド同士ということであれば、話は別だ。

 ミッションを完遂するために、その阻害となる対抗勢力を無力化することは当然予想される。

 

 僕は地球人より丈夫な身体と知識を与えられた状態で生成された。ただし、活動能力を高めるために瞬発力系に極振りしているため、おおむね十年程度で活動限界を迎えてしまう。


 でも、そんなデフォルトの能力に増して心強いのは、この三か月で自分に地球人の仲間ができたことだ。

 未来からタイムワープしてきたアリッサ・セントメリー。

 この国古来の神の力を発動して魔法を駆使する神楽坂弥生。

 卓越した身体能力の持ち主の蔵王権太郎。

 そして、僕たちをまとめてくれているのが、ごく普通の人間である久我姫乃だ。彼女がこの戦いのすべてぼ鍵になる、僕はそう思っている。

 

 彼女らは、あくまで自分たちの問題として、第四惑星の実力行使に自衛しようとしている。彼女らから見れば、僕もその一員だ。

 トモダチ、と彼らは言う。立場は違えど、友情という絆を結んで強固な信頼関係を形成し、事に当たる能力、これが地球人の驚異的な自律的進化をもたらしているのかもしれない。


 今まで不明だった対応勢力の正体も、彼らに操られた蔵王権太郎の証言からおおむね絞りこむことができた。

 こちらから積極的に仕掛けるつもりはないが、状況からして、全面衝突はそう先のことではないだろう。







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