22話


「皆さんこんにちはっ!!」


「うわっ!なんだ!?」



大魔術会当日、多くのプレイヤーが学園に集まっている。


そんな中突如大きな挨拶が学園全体に響き渡った



「わたくし、配信・実況活動をしています!キャスティで~す!そして!」


「はいは~い!アイドルやってます!シャウラで~すっ!」


「本日はモンドさんから特別な依頼があってですね、このキャスティとシャウラの二人でより一層盛り上げていきます」


「それでは会場の皆さん、もう準備はできてますね?行きますよ~!大魔術会!」


「「開・催!!」」


「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」



宙に浮く実況席のような場所から声が轟き、会場の熱気は最高潮を迎えた

二人の開催宣言と同時に学園にいるすべての生徒が飛ばされる



「うわっ!?」「なんだこの森…ってかジャングル?」「あーこういう感じね」


「影潜り」



飛ばされた先は広大な土地に木々が生い茂るジャングルのような場所、ナナトは状況を察して木の陰に息をひそめることにした。



「バトルロワイヤル!セイン学園はジャングル、ダク学園は島ステージとなっていますね!こちらの時間で三日間のうちに決着をつけていただきます!ここからは同時に進行していくのでセインはわたくし、ダクはシャウラさんお願いします!…いいですね、それでは皆の衆!潰し合えぇぇッ!」



キャスティの合図とともに近くにいたプレイヤーたちが魔術をぶつけ合う

ナナトは一足先に隠れていたことで落ち着く時間が取れた



「なァ、ナナト、お前は戦わねェのか?脱落させなきゃなんだろ?」


「あぁ、だが最初は戦わない方が得だと思うんだ。っていうのもこれはバトルロワイヤルって言ったろ?最後まで残ったやつの勝利って意味なんだから何人倒しても意味ないってことだ。倒しまくった奴が上がれるって勘違いしてるプレイヤーもいるみたいだがな」


「それじゃ怒るやつも…あァ」


「ん?どうしたネロ」


「いや…なんでもねェ、それよりそろそろ持たねェんじゃねェか?」


「そうだな…よっと」



音がしなくなったのを確認して木陰から出る。燃えた跡や水たまり、何本か折れている木が視界に入る。



「やばいな…思ったより全員攻撃力高そうだ。」


「ギャハハハッ!そりゃお前みたいにほんとに闇魔術しか使えないやつなんかそういねェしなァ!ま、そのために俺がいるんだろ?大丈夫だ、俺達ならなァ」


「…心配だな」


「なんでだよッ!」



___________


ナナトたちが転送されたと同刻、当然のことながらサラも島ステージに飛ばされていた


「あら~…砂浜かしら~?」


「火球っ!…へへッ先手必勝だぜ…」



開始と同時にサラめがけて魔術が飛んできた

砂埃が舞い、サラの姿が見えなくなる



「まずは一人…」


「あらあら~…いきなりびっくりしちゃうわよ~」


「なっ!?直撃しただろ!」



サラは静かな笑みを浮かべながら砂埃の中から出てきて敵を一瞥する

お互い杖を構え対峙した時、サラは突然口を開いた



「…ねぇ、いきなりだけど聞いてくれないかしら~?」


「な、なんだよ突然…」


「私はね、今すっごく不満なの。私の知らないところで私の大好きな人がほかの女と話している、話しかけられている。想像するだけでも妬ましい。誰よりも近くにいたのは私なのに。だからね、本当は私、早くここから抜け出して会いに行きたかったの。」


「は、はぁ…(知らねぇよ!!ってか怖ぇよ!!)」


「でもね…ナナト君は私の魔術がすごいって褒めてくれたの!とっても嬉しかったなぁ…ゲームが下手な私でもナナト君のそばにいる希望ができたのよ!だから私はこの大会に優勝しなきゃいけないの。勝ってナナト君に凄いって、流石って褒めてほしいの!だからね……」


「あなたを脱落させるわ」


「……」


(涙出てきた!やだ!怖い!逃げたい!)



サラがナナトから離れていた時から溜まりに溜まった不満が今ここで爆発した

ナナトの前では隠してきた感情、作ってきた話し方も忘れて早口でまくし立てる

サラに攻撃をしかけた男はすっかり涙目になってしまった



「わ、わけわかんないこと言ってんじゃねぇ!!」



恐怖を押し殺して気丈に振る舞う男は魔術を放つ。今度は確実に倒しきるために火の魔術球を何度も何度も撃ち込む



「ホール」


「………は?」



サラはその魔術をすべて、真っ黒な穴の中に吸い込んだ

それと同時に木の杖だと思っていたものが魔導書の形に切り替わる



「それじゃお返しするわね~」



魔導書が金色に光ったかと思えば、ボゥッと音を立てて巨大な穴から大きな炎が放たれる



「うわぁぁぁ!!??」


「あらあっけなかったわね~。さてと、優勝目指して頑張りましょ~!」



そうして魔術の化け物は早々に一人を脱落させて島の中央を目指した



この町にたどり着いた時点でサラは導かれるように魔導書を獲得していたのだ

魔導書の名は『禁断林檎』

杖と魔導書二つの形態を持つ魔導書だ

内包魔術は反転魔術と言い、使用した魔術の反転を行う魔術である

ホールの魔術は本来格納する能力しかない魔術であるが、反転魔術を使用したことで放出を行えるようにした


また、ホールの魔術は本来、闇属性単体魔術であるがサラはそこに風を発生させて火球を吸い込む範囲を広げたのである。



________

≪訂正≫


魔法は人智を超えた力、魔術はあくまで現象を引き起こす力って書いてたんですけど、魔法はあくまでシステムの範疇の誰でも同じように使える力、魔術は形の決まってない適性に左右される個人差のある能力って解釈でお願いします






















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