第14話
「『あのおそがいドラゴンば、どねぇかしてちょお。だば、眷属っちゅうのんなってもええだで』といっていル」
「いや、名古屋弁に訳されたら逆に分かりづらいんだけど」
「しょうがないじゃん、俺にはそう聞こえるんだから! むしろ名古屋弁から標準語に翻訳してくれ、俺も分からん! おそがいって何!?」
おそがいは……Scaryって聞こえたから、恐ろしいって意味じゃないかな?
ってか、ボンちゃんって【言語理解】
ボンちゃんとロキシーちゃんが名古屋弁で翻訳してくれるんだけど、俺には逆に分かりづらい。ゴブリンたちが喋っている現地語(英語)のほうが、まだわかりやすい。
集落から代表のゴブリン数匹をキャンプ地まで連れてきたわけだけど、ここまで、コミュニケーションは円滑にとれていると思う。
ロキシーちゃんの使った【魅了】は、とりあえず効果はあったみたいで、警戒心が大きく下がってるっぽい。今のところ、敵対的な行動はされていない。
そんなゴブリンたちから話を聞くと、どうやらこの島にはドラゴンが棲み着いているらしい。百年ほど前に、どこからともなく飛来してきたそうだ。
そのドラゴンは島を南北に縦断する山脈付近を住処にしており、島の生き物を餌としているのだとか。ゴブリンたちも、度々襲われて喰われているそうだ。
……大陸のゴブリンは肉が臭くてスライムも寄り付かないんだけど、この島のゴブリンは違うのかね? 原種のゴブリンは臭くないのかも? 試す気はないけど。
それとも、ドラゴンは味覚が違う? 蓼食う虫も好き好きって言うしな。そういうこともあるかもしれない。ケミカルな風味がジャンクな感じでたまらないとか。
「はーん。こいつらがあんなツリーハウスに住んでたのは、ドラゴンから身を隠すためだったってわけか」
「だろうね。山に行けば洞窟とかもあるんだろうけど、山はドラゴンの
原種のゴブリンはそういう生態なのかと思ったけど、どうやら必要に駆られてってことみたいだな。切実な生存戦略の一手だったわけだ。
「まぁ、俺的には問題ないかな。どのみち、ドラゴンをなんとかしないとこの島に移住できないんだし。否応無し!」
「もしドラゴンを【調教】できたラ、移動の足にできるかもしれないしナ!」
「ドラゴンライダーか……ロマンだね!」
うむ、夢があるな! 俺も乗せてもらおう!
もし乗り心地がよかったら、俺も竜哭山脈のドラゴンを捕まえてドラゴンライダーになる! うむ、悪くない!
というか、小桜◯ツ子と豊崎愛◯の声で喋られると、アニメっぽくて妙な感じがするな。日曜の朝……いや、話してる内容からすると週末深夜枠か? 迷作の予感?
「なんや、ビートはんが乗り気になっとるで?」
「あら、よろしいではありませんの。ビート様が楽しそうなら、それが最善ですわ」
「そうね! アタシもドラゴンに乗ってみたいし、いいと思うわ!」
「いや、ドラゴンだぜ? さすがの坊っちゃんでも危なくねぇか?」
「ボスなら平気だみゃ! なんなら古竜でも平気だみゃ! 多分!」
「そうね。沢山いたら、一匹くらいはステーキにしたいと言い出すかもしれないわね。準備しておかないと。うふふ」
「……鉄板の上には夢がある」
うちの女性陣が何やら密談している。不穏な気配は感じないから、多分問題ない。
大方、倒した後の処理の話でもしているんだろう。調理方法とかな。
っ! ドラゴンの骨からとったダシで作るラーメンなんてどうかな!? バラ肉の叉焼も作って! おおっ、食ってみたい!
「よし分かっタ、貴様らの望みを叶えてやろウ! その代わリ、ドラゴンの脅威を取り除いた暁にハ、貴様らは我が配下となるのダ! 良いナ!?」
ロキシーちゃんが英語で話しかける。聞き取れないけど喋れるんだな。技能って不思議。
それを聞いたゴブリンたちが頭を下げる。時代劇ならへへぇ〜って感じに土下座するところだろうけど、彼らは腰を曲げるだけ。文化の違いだなぁ。
「『ははぁ、よろしくお願い致します』と言ってるよ」
ゴブリンたちの言葉を俺が翻訳して伝える。簡単な英語だからな。
「……最初からビートが翻訳したほうが良かったんじゃね?」
うん、俺もそう思った。
◇
さぁ、ドラゴン退治だ! と思ったけど、基本方針は捕獲だな。【魅了】と【調教】で懐柔して、ゴブリンや今後移住してくるかもしれないヒト族を襲わないように言い聞かせる。うん、これだな。
「それじゃ、早速向かう? それとも明日にする? お風呂にする? それともご飯?」
「お風呂とご飯にはまだ早いかな? うーん、まだ昼過ぎだし、偵察くらいはできそうだね。じゃ、僕とボンちゃんでいってみようか」
う、うむ、偵察な! 情報収集は大事だよな! 知ってたし!
あれだろ、『彼を知り己を知れば百戦危うからず』ってやつだ。
『彼の好みを研究して自分磨きをしておけば勝負服で迷うことがない』って意味だって、JDだった頃の姉ちゃんが言ってた。
絶対違うって思ったけど、実際それで結婚まで持っていけたんだから、大きな間違いではなかったのかもしれん。
「おう! じゃ、ロキシーは他のゴブリンの集落を【魅了】してまわることにするか。眷属にしやすくするためにな」
「うム、任せロ」
俺は勝負服がないから技能で勝負だ! 今後に備えてしっかり下準備しておく。
ここで言う下準備とは、下着の準備のことではない! 勝負下着はヒョウ柄Tバックと既に決めてあるからな! 迷わないのだ!
というわけで、偵察にいくか。いやぁ、ビートの魔法で飛んでいくだけだから楽なもんだ。
今回はワンコもお留守番だから、カジカジされることもない。痛くはないんだけど、ちょっとだけ気持ちよくてクセになりそうなんだよな、アレ。
「あの山にドラゴンがいるのか。結構でかいな。富士山くらい?」
「うーん、そのくらいかな? 三千メートルくらいだと思う」
「あの山も魔法で作られたんだろう? 富士山作れちゃうとか、昔の魔法使いはとんでもねぇな」
「だねぇ。擬似的な神様まで作れちゃうくらいだから、ものすごい技術だよね」
「え、ナニソレスゴイ」
あの攻撃してきた神様みたいなのが量産できるってことだろ? ヤバすぎじゃね?
「僕が会ったのは、仲間の魔法の強化と、対象を強制的に奴隷化する能力を持つ偽神様だったよ。まぁ、全部無効化して勝ったけど」
「人工とはいえ神様に勝つとか、お前も大概だな!」
神様と戦うとか、コイツ、この歳で一体どれだけの修羅場をくぐってきてんだよ! 異世界転生も楽じゃねぇな。
……いや待て? おっさんの武勇伝は大抵盛りまくってるもんだ。もしかして、コイツのもフカシだったり?
いや、今更フカす意味はないか。
だって実際、コイツが神様と弾幕シューティングしてるところ見てるからな。なんなら俺も参加者だったし。強制参加だったし!
まぁ、神様に勝てるくらいなら、ドラゴンだって余裕だろ。今回は安心して見てられるな。
そう、俺は何もしない! 見てるだけ!
だって、まだ偵察じゃん? おれが【魅了】とか【調教】を使うのは本番になってからだ。
「大分近づいてきたな。どう、いる?」
「うーん、ちょっと待ってね……あ、いるね。一匹、この先を飛んでるっぽい。あ?」
「ん? どうした?」
「気付かれたっぽい。こっちに向かってきてる」
「え」
偵察が強行偵察になりそう? いきなり生本番?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます