第12話

「アレってゴブリン? 緑色の人型な小さいやつら」

「えっ、見えるの? ああそうか、【千里眼】だったっけ。うん、小さい緑色の人型モンスターだったら、多分ゴブリンだね」


 まだ一キロ以上離れてるのに見えるのか。やっぱ便利だな、技能スキル。こっちの世界にも導入されないかな?

 それはそれとして、ここにもいるのか、ゴブリン。本当にどこにでもいるな。

 けど、大陸にいた奴らとは、ちょっと気配の質が違う気がする。

 なんか、気配の色がちょっと赤みが勝っていて、彩度も高い感じ。亜種なのかな?

 いや、ここは絶海の孤島だもんな。ガラパゴス的に独自進化していてもおかしくはないか。


「ゴブリンって確か、救いようのない害獣なんだっけ?」

「そうだね。生態系を狂わすし繁殖力が高いし人を襲うしで、見つけたら即殺処分が推奨されている魔族だね」


 ゴブリンは、ある程度の大きさの哺乳類や爬虫類となら、相手を選ばず繁殖できてしまう。しかも産まれてくるのは必ずゴブリンでオスばかり。生物学ガン無視だ。

 成長もとんでもなく早いから、比喩なしでねずみ算的に増えていく。本当、どうしようもない害獣だよ。


「そっかぁ。ここから見てる分にはそんな感じじゃないんだけどなぁ。赤ちゃんも可愛いし」

「うーん。でも、生かしておくとどんどん増えて人も襲うからなぁ」

「そっか、そうだな。いずれここにも避難民が押し寄せるかもだし、その時に襲われるのは困る。やるしかないか。悲しいけど、これって生存競争なのよね」


 ボンちゃんが某昭和アニメの軍人さんのようなセリフを吐いてるけど、聞いた話じゃ平成産まれだったはず。なんで知ってるの?

 いや、俺もリアルタイム世代じゃないけど知ってるな。名作だし、アーカイブで観たのかもしれない。


「生きるって辛いな。ごめんね、せめて赤ちゃんがオッパイ飲み終わるまで待ってあげるから。ゆっくりお飲み」


 うん、赤ちゃんに手をかけるのは辛いよな。害虫なら平気なんだけど、哺乳類っぽい見た目のやつはどうしてもね。

 せめて授乳が終わるまでは……ん? 授乳?


「ちょちょちょ、ちょっと待った! 授乳って、ゴブリンが!?」

「ん? うんそうだけど? チュウチュウ吸ってる」

「母乳をあげてるのは、ゴブリン!?」

「うーん、オッパイはそれなりに大きいけど、緑でちっちゃいからゴブリンなんじゃない?」


 マジか!


「ボンちゃん、殲滅は中止! それ、もしかしたら大発見かもしれない!」



 はぁ〜ん? 赤ちゃんがオッパイ飲むのが大発見? 赤ちゃんは大体オッパイ飲むものじゃねぇの? 異世界は違うのかね? お父さんが優先?


「いや、大陸のゴブリンはオスしかいないんだよ。オッパイなんてあげないから」

「えっ? じゃあ、あのゴブリンって、オッパイ大きいのにオスなの? 新種?」


 なんだよ、ただの乳デブかよ。ちょっとだけ興奮して損した。

 返せ、俺にオッパイを返せ! いや、俺のじゃないけど。


「新種……いや、もしかしたら原種かも……」

「原種?」

「うん、大陸のゴブリンって、古代魔法王国が品種改良……改悪した種の子孫なんだよ。本来のゴブリンっていうのは、もっと気性が穏やかでオスメスのある普通の生物だったらしい」

「ほぉー」

「それで脱走した改悪種が自然繁殖して、大陸の原種は駆逐されちゃったみたいなんだよね」

「ふむふむ」

「でも、この島はその古代魔法王国が作った人工島だからさ。もしかしたら品種改悪される前の原種が連れてこられていたのかもしれない。それが神様の天罰が下った後も生き延びていたとしたら?」

「おお、なるほど!」

「もちろん、この絶海の孤島へ適応するために変異はしてるかもしれないけど、少なくとも大陸の改悪種とは違ってるように思える。これは慎重に対応する必要があるかもしれない」


 うむ、分からん!

 話が長ぇよ! 情報量が多すぎる!

 俺の脳みそを舐めるな! 演算速度はスーパーコンピューター並だけど、メモリーは八ギガくらいしかねぇぞ!

 まぁ、全然分からないってわけでもなかったけどな。多少は処理できてる。遅延してるだけ。


「つまり……駆除する必要はないってこと?」

「あー、うん。まぁ、とりあえず様子見かな? どういう生態なのか、観察してから決めるべきかなって」

「ふむ、分かった」


 それじゃ、亜空間開門!


「うわっ、何これ!?」

「ああ、俺のスキルだよ。【時空間魔法】ってやつだな」

「ああ、そうなんだ。へぇ、こっちの【時空間魔法】と全然違うなぁ」

「そうなん?」

「うん、こっちにもこういう空間系魔法を使う子がいるんだけど、その子の魔法は一瞬で取り込んだり出したりなんだよね。こんな穴は開かないなぁ」

「へぇ……その子、可愛い?」

「へ? いや、可愛いか可愛くないかで言えば可愛いとは思うけど、男の子だよ?」

「何だつまらん」


 可愛い子なら、紹介してもらって仲良く空間系魔法談義をしようかと思ってたのに。男ならどうでもいい。苦笑いするなビート。


「じゃあ仕方がない、可愛い子は自前で用意しよう! というわけで、いでよロキシー!」

「出まして来ましてロキシーでス!」

「うわっ、誰っ!?」


 おっ、またびっくりしてる! そうだろうそうだろう。突然美少女が穴から出てきたらびっくりするよな。ドッキリ大成功!


「まぁまぁ、落ち着け。これも俺の分身のひとつだよ。こう見えて木の擬態なんだぜ。すげぇだろ!」

「うム、この個体はロキシーと名乗っていル。よろしくナ」

「へぇ。そうなんだ? でもなんでダコタ=ファニ◯グ? 豊崎愛◯声?」

「「可愛いからダ!!」」

「へ、へぇ。あ、そう」


 うむ、有無を言わさぬ宣言! これぞ意見を押し通す極意だ!


「まぁ、それはいいや。けど、なんでこの子を呼んだの?」

「そりゃ、こいつが【調教】のエキスパートだからだよ」

「え」

「こいつであのゴブリンたちを【調教】しちゃうからだよ!」

「え……ええええええ!?」


 呑気に生態観察なんてしてられるか! 俺は忙しいのだ!

 だから手っ取り早く【調教】だ! 生態なんてものはその後でゆっくり調べればいいのだ!


 さぁ、我が前に跪けゴブリン共よ!! 美少女の靴を舐めるのだ! ご褒美だぞ!

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