第4話
「無人島?」
「そう。この大陸の南東あたりに、北海道と同じくらいの大きさの無人島があるはずなんだよ。大昔に古代魔法王国が作った人工島らしいんだけど、神様の禁忌に触れて滅ぼされちゃった島なんだって」
「おおう、古代魔法王国! ファンタジーだな! そして神様! この世界にはマジもんの神様がいるのかよ!? しかも天罰落とすとか、ガッツリアクティブなんだな!」
マクガフィン先生によると、その島では魔力に代わる新しいエネルギーの研究をしていたらしい。それが神の禁忌に触れて滅ぼされた……ってことは、考えるまでもなく核研究の施設だったんだろう。
おっといけない、この世界の初心者であるボンちゃんに、禁忌について教えておかなくては。
「そうだよ。禁忌に触れたら天罰を落としにくるからね。この世界では【核開発】と【新生物創造】が禁忌だから、絶対に手を出さないようにね」
「あー、なるほど了解。元の世界でも問題になってたことだしな。ってか、そもそも俺にはそんな知識はないから心配無用だけどな」
「ならよかった。っていうか、ボンちゃんって元の世界では何してた人? 僕はCGデザイナー」
「俺はただのサラリーマンだな。経済学部出て、中堅ゼネコンの地方支社で総務やってた。趣味がヲタクだったから、多少のSF系の知識はあるけどな」
「そっか、だったら大丈夫そうだね」
核物理学や生物学とは縁遠そうだ。これなら禁忌に触れることはないだろう。
「ってかさ、俺って大丈夫なのか? 異世界から来たってことは、がっつり新生物なんじゃない? 天罰落ちないか?」
「っ!」
確かに!
マクガフィン先生で鑑定したから、既にボンちゃんの情報は神様のところまで届いているはず。
もしボンちゃんが禁忌に触れる存在なら、今すぐにでもラプター島が飛んでくるかも!
「ジョン、周囲を警戒、特に空、北方向に注意!」
部屋の中央にあるダンジョンコアに手を触れて指示を出す。ダンジョンコアと、それに繋がる数本のラインが黄色く点滅する。
同時に、ジョンと俺の意識がリンクする。ジョンの視界――ジョンには目が無いから視界と言ってもいいのかわからないけど――が捉えた拠点外部の様子が、映像として俺の脳に流れ込んでくる。
ラプター島が飛んでくるとしたら北の方角だけど……うわっ、マジで来てる! 空飛ぶ島のシルエットが、ドンドン大きくなってる!
「やばい、ボンちゃんは禁忌に触れてるらしい! 神様がこっちに向かって来てる!」
「なにぃっ、マジかよ!?」
ここに天罰を落とされるなんて冗談じゃない! ここは俺のモフモフ理想郷にするんだからな! 神様でも邪魔はさせない!
「すぐに避難するよ! ジョン、神様は僕らを追ってくるだろうからここは大丈夫だと思うけど、念のために僕らが退避したら絶対防御態勢に移行して! ボンちゃん、逃げるよ!」
ボンちゃんを脇に抱えて外へと走りだす。外までの直通通路はジョンが作ってくれるから、俺はまっすぐ走るだけだ。
走りながら魔導ケータイを取り出し、クリステラへと連絡をとる。おっ、ワンコールで出るとは、なかなかの反応だ。
「もしもし、ビートだけど!」
≪はい、クリステラですわ。ビート様、どうなさいました?≫
「ちょっとまずいことになった、ラプター島がこっちに来てる! 狙いはさっき拾ってきた豆らしい! とりあえず僕はコレを持って身を隠すから、後のことはよろしくね!」
≪っ! 承知致しましたわ! こちらはお任せくださいまし!≫
通話を切って魔導ケータイを懐に仕舞い、走ることに専念する。外までほんの数秒のはずなのに、やけに長く感じる。
なんだよ、いきなりピンチじゃん!
◇
いきなりピーンチ!
異世界転移して最初の敵がその世界の神様とか、俺、どんだけツイてないんだよ! 普通はゴブリンとかスライムからじゃねぇの? チュートリアルからやらせろよ!
ビートに抱えられて石造りの廊下を走る。っていうか、俺は抱えられてるだけなんだけど。豆なので。
微妙な登り坂になってる廊下の先には、出口らしき光が小さく見えている。俺たちが駆け抜けた後を見れば、その廊下が塞がって壁になっていく。
すげぇっ! めちゃ魔法っぽい! これって土魔法か? 俺も覚えたい!
廊下には窓がないんだけど、周囲は不思議と暗くない。これもビートの魔法か? 光魔法かな? 俺もできるぞ!
その石造りの廊下が唐突に終わり、視界が急に開けた。ビートの踏み出したそこは、既に空の上だった。
「うおぉおぉっ、落ちるぅっ!?」
「喋らないで! ビリビリ振動して持ち難い!」
「あ、はい」
怒られちゃった。
形状変化の応用で喋ってるからな。全身スピーカーみたいなもんだから、振動が凄いんだコレが。マッサージに使えなくもない? ボボボボってな。
ほほう?
落ちるかと思ったら、こいつ、空を走ってやがる。こんなこともできるのか。
この世界には
まぁ、俺ほどじゃないけどな! 技能と魔法の多さでは負けないぜ!
いや、俺の持ってる技能じゃ空は走れないけどさ……ふ、ふん! 悔しくなんてないんだからね! 今はできないってだけなんだからね!
こいつ、前世はCGデザイナーって言ってたな。やっぱクリエイターは発想力が高いんだな。
俺もちょっと勉強させてもらおうかな? 盗めるところは盗んでいこう。
おっと? 急に風がなくなったな。ああ、周囲を透明な壁で覆ったのか。これもビートの魔法っぽいな。ほんと、多才だな。
おお、なんだアレ!?
街の外壁がせり上がって……いや、街を覆っていく!? しかも、表面が銀色だ! バリアーか何かか? かっちょいい!
「あれが絶対防御態勢だよ。土魔法で作ったチタン合金とセラミックの複合装甲の表面に、雷撃と光線対策の銀薄膜を展開してある。あの神様の攻撃は一回見たことがあるからね。その対策だったんだけど、まさか本当に使う機会があるとは思わなかったなぁ」
街が全部覆われて、銀色のドームになった。そのまま空を飛びそう!
それにしても、もしものときの神様対策とは、こいつどんだけ用心深いんだよ。
ってか、それくらいしないと生きていけないくらい、この世界ってハードなのか? 怖いな異世界!
「ちょっとあの島を引き付けて、拠点から引き離すから。もしかしたら攻撃が来るかもだけど、反撃はしないでね? 完全に敵認定されちゃったら、流石の僕でも対処できなくなるかもだから」
「了解。触らぬ神に祟りなし、ってやつだな」
「話が早くて助かるよ」
ビートが苦笑してる。
はは〜ん? さてはこいつ、お人好しだな?
ぶっちゃけ、この場の一番簡単な解決方法は、俺をあの神様に差し出すことだ。俺が処分されておしまい。それが一番簡単で被害が少ないはず。
でもそれをしないってことは、こいつがお人好しだっていう証明だ。
そして、俺はそんなお人好しが嫌いじゃない。友達にするなら、悪いやつよりいいヤツのほうがいいに決まってる。
そして、いいやつを困らせるやつは悪いやつだ。そう、大魔王の俺みたいなやつのことだな!
そんなやつは処分してよし! ということで。
「なぁ、俺を見捨てていいんだぜ? この体は数ある分体のひとつだから、失くなっても大した影響はないし」
「いや、僕はボンちゃんの手助けするって決めたからね。こう見えて僕は頑固なんだよ」
ノータイムでその返答かよ。まったく、本当に人がいい。
こりゃ、いざとなったら俺が体を張るしかないか。本格的にヤバくなったら、こいつと一緒に亜空間へ逃げ込もう。
そうしたらもうこの世界には戻ってこれないし、あっちの世界の崩壊の危機に巻き込んじゃうけど、こいつとならなんとかなりそうな気もするしな。
「それに、同郷なら僕の知らない役に立つ知識も……ああ、そういう手もあるか。いや、むしろそれしかないかも……よし、あの島に突っ込むよ!」
「はい?」
「あの島の神殿に突っ込んで、神様に直談判する! 直訴だ!」
「はいぃっ!?」
マジか!?
こいつ、ただのお人好しじゃなかった! お人好しのクレイジー野郎だった!
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