ジャズの即興演奏のように、抑揚と唐突な狂騒が交互に訪れる。拍子を刻むのは重厚な暗黒のユーモアと、奇妙な軽快さ。暴力と笑いの間に漂う甘やかな皮肉が、文章の奥底で微かに香る。
特筆すべきは、登場人物の描写の妙。アンジー君の背中に立ち上る瞋恚の炎や、パメラ君の恐怖の表情を通して、温度や匂いも感じるよう。文章は細かいが、散漫にはならず、刹那的なユーモアと緊張感を絶妙に融合させている。
破裂する爆音、床の波打ち、埃の舞い……抽象的描写と具体的描写が絶妙に層を成す。ユーモアの節々も絶妙で、「名探偵基本姿勢その1。両手を高く上げて、のびのびと命乞いの運動」など、笑ってしまうだけでなく、人間の生々さも感じる。
決闘、誘拐、暴力、ユーモア、不可思議な偶然が入り混じる展開は、従来の「探偵譚」の枠というよりももはや別物ではないでしょうか。
この作品は文章表現の遊戯性と、キャラクターの生々しい存在感が両立し、破天荒さの中にある計算された美学と、毒のある遊び心を感じる。
『名探偵ノーマンと至極の推理命題』は、名探偵ノーマンとドジ助手アンジーの凸凹コンビが繰り広げる、」まるで濃密なショートコース料理を味わうような作品でした。
涙に暮れる依頼人に寄り添いながらも、事件はとんでもなく奇怪で、病院に潜入すれば水浸し、果ては……その無茶苦茶さが、逆に作品に温もりと独自の品格をもたらしています。追い詰められるスリルの中でも、ノーマンのダンディーさはどこか頼りなく、それがまた愛おしい。
混沌の中にふと垣間見える「人の情」があり、それが陰謀渦巻く事件の重さを和らげ、読後感は爽やか。あなたの夜を彩る、軽やかで芳醇なフルコースとなっております。
ハードボイルドな探偵……フィリップ・マーロウしか知らなかった私は、本作のノーマン探偵に度肝を抜かれてしまいました。
物語は、ある朝に一人の女性が探偵事務所にやって来るところから……始まらない。
アンジーことアンジェリカ助手によって、プリンを勝手に食べたことによる報復を受けてから始まります。
そのテンションの高さのまま、一人の女性から電話が。
カフェで落ち合い、「妹のパメラを探してほしい」と依頼を受け……
……ようやく本格的な探偵小説が始まるのかと思いきや、ここから、とんでもない混沌世界への大冒険が始まったのです!
ギャグに次ぐギャグの応酬の中で情けない姿をさらしつつも、ノーマン探偵は調査を諦めずに果敢に突き進んでいきます。(ほぼアンジーのおかげか……)
そして、最後の最後、彼は素晴らしいダンディズムを見せてくれました。
ノーマンという名の裏に隠された、彼の本当の姿に、胸が熱くなること必死です!
最高にダンディな探偵の活躍、是非ともご一読ください。
本当にダンディな「自称ダンディ」を、私はついぞ見かけたことがありません。
一番有名なダンディ? な人物は、派手な黄色のタキシード着て「ゲッツ!」ってやってますし。
そう、ダンディを名乗る輩は総じてギャグキャラ、三枚目……。
そして彼も相場通り、いや相場以上の三枚目!
ダンディズムは13行で死にました。
そこからはもう、ひたすらコミカルでお茶目で、ダンディ()に振舞うおじさん劇場です。
もっとも、探偵業もしっかり忘れちゃいません。
ダンディから点が消えればタンティですからね、ダンディの本質は探偵にあるのですよ、多分。
色々ふざけたりドジしたりと手を変え品を変えと笑わせてきますが、探偵らしく足を使っての聞き込みや潜入捜査、実に実直かつ大胆にやってくれます。
そして探偵の奥の手をいくつも見せつけては、読者を気持ちよく笑わせてくれます。
いや、本人は切羽詰まって必死そうなんですけどもね。
一話一話のボリュームは結構ある方ですが、そんなコミカルさのおかげでついつい読む手が止まらなくなります。
つまり読むコストゼロカロリー。
だったら読むしかないでしょう、乗っかれ、このダンディに!