4/25:手信号と、心の重さ
4/24
午前の出来事
・文化祭初日! ……と、いいつつ私たち文化部は明日が本番なので、二日目の文化祭が開催される大ホールへ歩いて行って、リハーサルをしてきました。初めての控室……かもしれない? 控室でヲタ芸をみんなで合わせて、初めての大鏡の前での練習のおかげか、気分も高揚して。ああ、そういえば。やはりというべきか、舞台屋さんって、凄いですね。空気がピリピリしていて、ああ、中学とは違うなって思いました。
午後の出来事
・友達の荷物を持ちつつ持久走をしながら学校に帰ってきたはいいものの……自分のクラスを見に行ったらせっかく作った出し物がかなーり破損していて(文会員でもないのになぜか今回の出し物、マリオ調のバスケットゲーム設計担当(土管と看板はクラスメイトに手伝ってもらいました)になっちゃったので)、なんだかむかーってきて修復していました。ああ、もっと時間があれば、設置の時にちゃんとクラスにいればなあ。ま、最後まで崩壊はしなかったし好評だったのでよしとしようか。
あ、戻ってきた部員の人たちとはみんなで別のクラスの出し物を回って、書道パフォーマンスを見ました~✨!
4/25
午前の出来事
・いざ本番。ドッキドキで……なんてことは案外なく、私たちの今回の出し物の先陣を切ったラップに思わず吹き出してしまってからは、その場の空気に乗れていた気もする。そして不安だったサイリウムを折るタイミングも昨日のリハでサイリウムの硬さも把握していたので無事点灯! 見返してみれば若干先行しちゃったところもあるけれど綺麗だったし、達成感も凄くあります。ふふ、1つ肩の荷が下りました。
午後の出来事
・さあここからが文化祭の本番ですよぉっ! 友達とそばを食べに行ってからの午後の部は邦楽から始まって、いいや、痺れた。やっぱりお琴は綺麗。そういえば、奏者の人たちは楽譜なしでやっていたような……? 凄いな。
でも、大変だったんだろうなぁ。今年はヲタ芸をやったから手抜きでできるようなもんじゃないっていうのは体で感じたから余計にそう思う。
そして飛んでトリは鉄板と言えばそうだけれども吹奏楽部で、最後の宝島で……なんていうのかわかりませんけれどカウベルが二つぐらいくっついたみたいなのをうちのクラス随一の陽キャ(?)がやっていて、格好いいなぁって思わず見ちゃいました。
<手信号と、心の重さ>
文化祭二日目。それは文化部が一堂に会して輝く数少ない時。
それは誰かの晴れ舞台で、たった一日のそのうちのたった数分のためだけに出演者のみんながみんな数十時間の練習を積んでやってくる。
そして私も、客席から見れば数多いる出演者の中の一人。
会場に来て、クラスメイト達と一緒に客席へはいかず、裏の控室へ。荷物を置き、体操服に着替えて、肩を回す。昨日熱が入りすぎたせいか、緊張のせいか、肩を回してみるとにゴリゴリと嫌な音がした。だけどどちみち、今日で終わりだから、やるしかないよね。
メインスタジオの大きな板張りの床で、何度も何度も同じ動きを繰り返す。結局最後に頼れるのは経験だから、一回でも、多く。エンジンがかかるのが遅いのは悪い癖だし、御大層な口ばっかり回るのなんて最悪だけれど、それを理由にミスするなんてことは、絶対にあってはならないし、嫌だ。
先輩の声出しに合わせて構えて、指を伸ばす。胸を開くときには腕を曲げないように、 一挙一動の手をおろそかにしないように。隣の相方は、自分よりもよっぽど上手い、ただ先にスタートダッシュを切られたというだけなのかもしれないけれど、食らいつかなきゃいけないのは軸のブレないあの動きだ。
実は、ステージに立ってヲタ芸をする時間は1分と少ししかない。体感はもっと長いし、本当に一分しかないのかと言いたいぐらいに体も痛くなるけれど、一度失敗したらリカバリーも効かないくらいの時間しかないんだ。
メインスタジオ、一回目のリハ。頭でつまずいて、腕が縮こまっている。二回目のリハ、終わりの腕がだるさからか、足が絡まった。
「舞台袖に集まって」
先輩に呼ばれ、研修報告の響く場所に来て初めて、大勢の人がいることを肌で感じた。
途端に、緊張が体を襲う。
新品のサイリウムを班員の人数分回してから、いてもたってもいられなくて、もう一度反復練習。がくっと最後の踏ん張りを失敗して体が後ろにそれた。体がもうやるなと言っている。
でも、まだ怖いから。不安な場所だけでも何度も、何度も。そう広くない舞台袖で腕を振り回し続ける。もしこれが昨日だったのなら舞台屋さんからも白い目で見られていただろうけれど、今日は強面の音響さんにすらも睨まれなかった。
二つ前の、研修報告が終わる。私たちの前でギターを弾く班員の人にも、スタッフさんが近づいて行く。
もう、そろそろだ。
ええっと、緊張緩和、緊張緩和って何があったっけ。
4-4-8呼吸法だとか?
「大丈夫?」
「え、いや大丈夫ですよ?」
私が息を止めているのが、緊張で気絶しそうなっているようにでも見えたのか、隣にいた班員の人が話しかけてくれたけれど、その実全く大丈夫なんかじゃない。むしろ「腕回ってる~?」って私に言いながら腕をぶんぶんしていたり「なんかワクワクしてる!」って言っているあなたの心へ「その実は大丈夫?」って言ってしまいたいくらい。
「がんばろっ」
反射で返したグーサインに合わせてか、彼女も小声でグーサインを掲げて見せる。
ま、違いない。
機械的で大きな音を立てて幕が、開く。ついに私たちの10分が始まった。
聞きなれたラップのリズムが耳をかすめる、そして客席からの笑い声が大きく、大きく聞こえる。部活の人たちも口を覆って小声で笑う。そして私もそれに紛れて笑う。……思っていたより、明るかった。
そのせいか、
「いけそうっすか」
ひとつ前に出番を控えた友人が語り掛けてきたのに「うん」って、答えていた。
「頑張れよ!」
ぐっ、と親指を立てたこぶしが突き付けられて、私もそれに倣ってグーサインを突き付ける。
こつん、なんていう音はならなかったけれど、その勇気がちょっぴりブレンドされた私の心が緊張の震えをわくわくで打ち消していく。
仲間に送るグーサイン、無事を示すグーサイン。これは私たちの晴れ舞台、ならば結末にはこの
さあ、ひとつ前の動画も終わる。歌手を務める先輩も舞台に出た。次は私たちの番だ。
ぐっ、隣の班員に、後ろで控える他の班員に、そして舞台を挟んだ向こうにいる相方にグーを掲げる。舞台を挟んだ向こう側には、どーせ見えていないけど。
なんだか、いける気がした。
たった一つの
明日はどんな日になるのかな、でもとりあえず今日は、おやすみなさい。
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