第23話 人化する
集落の門に到着。
足場を昇り壁から身を乗り出して外を見ると、少し離れた森からプランとマッドがこっちを見ていた。
前足を挙げて手を振るように動かして安全であると知らせると、二人と三体がぞろぞろと近づき始める。
足場を降りて門を開けるべく、
出迎え準備は完了。充分に近づいたところで声を掛けた。
「やぁ、遅かったね」
「ごめんなさいぃ。罠に手間取っていましたぁ」
「それもあるが、集落の中がどうなっているかわからない以上、下手に突入できなかった。すまない」
「別にいいよ」
誰だって自分の命は大事だしね。
「まぁ、とりあえず入ったらどう? 全員殺しておいたから」
「ほんとですかぁ! 沢山のお肉と経験値ですぅ!」
「……改めて、感謝する」
プランはすぐに人間を食べ始め、マッドも俺にしっかり頭を下げてから食べ始めた。
俺は疲れたし……ちょっと休憩しよう。
足場に昇った俺は、そこで体を丸めて休憩した。
それから暫くすると、姿が少し変わった二人が戻ってきた。
「ただいまですぅ」
「待たせたな」
プランは体が一回り大きくなり、頭の上に大きくなったピンクの花が咲いている。首にはライオンみたいな葉っぱのたてがみが生えていた。前より毛艶や毛並みも良くなり、顔も少し綺麗になっている。
マッドも体が一回り大きくなり、鱗がゴツゴツとした岩になっていた。体全体に艶ができて色味と形がよく、顔つきも少しイケメンになっている。
二人ともあの綺麗な娘を食べてアビリティ【美化・小】を習得したのだろう。
「おかえり。そして進化おめでとう」
「はいぃ。ありがとうございますぅ」
「進化もできたし、人化のスキルまで習得できた。この恩は忘れない」
別にマッドの為にやったんじゃないんだけど……。
「……それより、種族はどうなったの? 私はクレイジーキャットからワンダーキャットになった」
「私はプラントウルフから、ビッグプラントウルフになりましたぁ。呼び方はプランのままで結構ですぅ」
「俺はマッドリザードからロックリザードになった。ただ、人化できるようになったからそろそろ自分の名前を決めたいと考えてる」
「ああ、いいね。私も名前考えよう」
「私も考えますぅ」
三人揃って自分の名前を考え始める。
ワンダーキャット――要するにこれって『不思議の国のアリス』に出てくるチェシャ猫だよね? ニヤニヤ笑顔が貼り付いてるし……。
というか、スキルとアビリティの詳細を確認するの忘れてた。一応レベルも確認したいし、ステータス!
名前:クレイ(仮)
種族名:ワンダーキャット
レベル:36
スキル:【ネコパンチ】、【ドランクブレス】、【狂気の瞳】、【不思議の国】、【人化】
アビリティ:【人語理解】、【酒豪】、【毒耐性・大】、【美化・中】、【精神耐性・大】、【悪食】、【野生の勘】、【スマイル】、【即死無効】
スキル【不思議の国】
・異次元の世界への扉を開き、いつでもどこでも訪れることができます。でも、その世界は不思議がいっぱいな場所。並みの精神では耐えられないのでご注意を!
スキル【人化】
・人の姿に変身する。変身後の姿はランダムで、一度使うと以降はその姿に固定される。
アビリティ【スマイル】
・いつもニヤニヤとした笑顔になれます。意識しないと笑顔はやめられません。
アビリティ【美化・中】
・外見をより美しくする。
アビリティ【即死無効】
・あらゆる即死効果を無効化します。
へぇ、【不思議の国】は緊急避難とか宿代わりに使えそう。【人化】は一発勝負か。ドキドキするなぁ。
さて、名前だけど……うーん……チェシャ猫……安直だけど“チエ”でいいか。
名前が決まったので二人の顔を見れば、自信有り気な様子。
「二人とも、名前決まった?」
「はいぃ、決まりましたぁ」
「俺もだ」
「なら私から。名前はチエにした。これからよろしく」
ぺこりと頭を下げる。
「チエさんですねぇ。よろしくですぅ」
「わかった。よろしくな、チエ」
「次は私が言いますぅ。私はボタンという名前にしましたぁ」
ボタン……あぁ、花の牡丹か。
確かに頭の上に咲いてるピンクの花、牡丹に似てるかも。
「いい名前だね」
「ああ、そうだな」
「ありがとうございますぅ」
「最後は俺だな。俺はコンゴウと名乗ることにした」
コンゴウ……ダイヤモンドの和名、金剛石から取ったのか。
「カッコイイね」
「ですぅ」
「うむ、ありがとう」
よし。自分の名付け終了!
ステータスはどうなった?
名前:チエ
種族名:ワンダーキャット
レベル:36
スキル:【ネコパンチ】、【ドランクブレス】、【狂気の瞳】、【不思議の国】、【人化】
アビリティ:【人語理解】、【酒豪】、【毒耐性・大】、【美化・中】、【精神耐性・大】、【悪食】、【野生の勘】、【スマイル】、【即死無効】
うん、バッチリだ。
ブラッドとマッスルも、今頃は自分の名付けを済ませたかな……?
ま、それはそうと楽しみに取っておいたことをやろう。
「じゃあお待ちかね。せーの、で人化しよっか」
「いいですねぇ。やりましょうぅ!」
「ああ」
「せーの――」
【人化】!
スキルを発動すると進化のように体が光った。
ネコの体がみるみるうちに人型に変化し、光が収まって視界が戻ると、懐かしさすら覚える目線の高さになっていた。
――あっ。
人化について、俺は一つ失念していた。人化はあくまで体が変化するだけであり、ご都合主義的に衣服を自動で着たり、生成されたりはしない。
結果、俺も含めて二人は全裸だった。
コンゴウだろうガタイの良いイケメンは、サッパリとした短い茶髪で、トカゲの尻尾を生やし、体の一部が岩の鱗になっていた。
ボタンだろうどでかい胸を持ちつつ抜群のスタイルの美少女は、ウェーブの掛かった緑の長髪で、頭の上にピンクの花を咲かせている。しかも、ウルフ耳も頭の上に付いていて、ウルフの尻尾を生やしている。
「うおわっ!? ちょっ、お前ら服を着ろ、服を!!」
コンゴウは面白いくらいに大袈裟な反応をし、立派な男の象徴を両手で隠すと、すぐに後ろを向いた。
「ふ、ふえぇ……」
ボタンはショックが大き過ぎたのか、泣きそうな顔をしてでかい胸を腕で隠し、その場にぺたりと座り込んだ。
「……なんか、ごめん」
申し訳なさがいっぱいで、アビリティ【スマイル】のニヤニヤ笑顔を止めた俺は謝罪した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます