第18話 空を飛ぶ



 カマキリの食事が終わるまでの間、俺はペロペロと毛づくろい。プランは日向ぼっこして過ごした。


「それじゃあ、行こうか」


「はいぃ、カマキリさんも付いて来てくださいねぇ」


 食べ終わったところで声を掛け、移動を再開。


 …………目立つなぁ。


 カマキリが堂々と後ろを付いてくるが、背が高いせいで遠くからでも目立ってしまう。


 このままだと魔物とか人間に目を付けられ――てるよ。


 頭上の空高くから明らかにでかいトリの魔物が、俺たちを起点に旋回していた。隙を見せようものなら急降下して襲って来そうな気配だ。


 ……まぁ、俺だけ警戒してプランかカマキリのどっちかが襲われて空の旅に出てくれれば、助かるしいいか。


 頭上を警戒しつつ、プランに知らせず進み続ける。街道の方で馬車が通ったり人間が歩いていたりしたが、トリを見た途端にそそくさと足を速めていた。このトリの魔物は相当ヤバイっぽい。


「あっ、トリさんですぅ」


 ようやくプランが気付いた。

 俺も今気付いたことにして口を開く。


「あーいるね。美味しそう」


「わかりますぅ。でも、食べるよりも使役して飛んだら、移動が楽じゃないですかぁ?」


 それだっ!!!

 なんで気付かなかったんだ俺? バカじゃん。


「プラン、あいつ仲間にしよう。そして空の旅をしよう」


「はいぃ。作戦はどうしますかぁ?」


「寝たフリ作戦でいく。被害が出てもいいように、カマキリを囮にする」


「わかりましたぁ。じゃあ――あそこの木で寝ましょうかぁ」


 近くの木が前足で示され、俺たちは木陰に入って寝たフリを始めた。カマキリも同じように寝たフリさせ、襲い掛かって来るのを待つ。


 ――キタッ!


 トリが斜めから急降下してカマキリに襲い掛かろうとしている。思ったよりは大きいが気にせず、タイミングを計って攻撃開始。


 【ドランクブレス】!


 カマキリを巻き込むように酒気を帯びた煙を吐き出せば、急には止まれずにカマキリを足で掴んだトリに直撃。勢いのままに墜落した。


「よし。プラン、あとは頼んだ」


「わかりましたぁ」


 二人で駆け寄り、プランがトリに向かって【寄生ダネ】を飛ばして当てた。今はぐっすり眠っているカマキリと同じように、頭に小さなピンクの花が咲いた。


「使役完了しましたぁ」


「いいね。あとは起きるまで待とうか」


 トリとカマキリが起きるのを待っている間、他の魔物や人間が来ないように見張る。

 だが、予想に反して魔物も人間も近づいては来なかった。この二体がそれだけ強力な魔物なのだろう。







 日が傾き始めた頃になって二体が目を覚まし、トリの背中に乗る。


「おぉ、ふわふわ……」


「ですぅ」


 トリの羽毛が凄く心地いい。最高級だ。


「じゃあ、出発しよう。目指すは――多分、西だろう太陽の沈む方向で」


「わかりましたぁ。トリさん、お願いしますぅ」


 命令に従い、トリは羽ばたいて飛び始めた。


 おおおおおお! 飛んだあああー!


 他のゲームで経験したことがあるけど、やっぱり空を飛ぶ時は感動する。ネコもいいけど、もしゲームで種族が選べるなら、今度は空を飛べる種族がいいな。移動が楽だし。


 街道に沿いつつ夕日に向かって飛び続け、山を一つ二つ超えたところで、比較的安全そうな平原の木の傍に着陸。トリの今日の活動はここまでで、プランの指示でカマキリが食材の確保に動いた。

 その間に俺は周辺を探索してみたが、特に気を付けたり変わったものはなかった。


 あぁ、ひまだ。


 仕方ないので、カマキリが取って来たウシの魔物を食べて木の上で寝た。




 翌日、カマキリが獲ってきた昨日と同じウシの魔物を食べ、朝から飛んで移動。晴れやかな青空が心地よく、プランは呑気に眠っている。


 さて、これでエルフの女から追われることはほぼなくなったとして……ここからどうしようか?

 プランは正直、危険過ぎるから用が済んだところで始末したい。やるなら今しかない。彼女はきっと、もっと多くの魔物を支配下においてとんでもない存在になるだろうから。

 けれど、今始末すると俺の移動手段がなくなるし、何も知らない場所で一人でやっていくことになる。それはかなりリスクが高い。

 だとするなら……友好関係を維持しつつ力を付け、プランたちがあまり居たくないような土地でお別れするのがベストだろう。

 そういった土地は……仲間が多いほど食糧や水の問題で不利になる場所…………そうだ、砂漠がいいかもしれない。

 プランはイヌであり植物だから、昼も夜も過酷な砂漠はきっと嫌がるはず。そうと決まれば、砂漠を目指そう!

 とはいうものの……砂漠はまだまだ先だな。


「ん?」


 なんとなく景色を眺めていたら、富士山みたいな綺麗な山から何かが飛び立った。


 じーーー…………ワイバーン?


 一見すると漫画やゲームでよく見るドラゴンのようだが、腕がないのでそう判断した。


 あれ?

 あいつこっち来てね?


「プラン起きろ。なんかワイバーンっぽいの来てる!」


 ペシペシとネコパンチ。


「ううーん、あと五分……」


「べたな寝言はいいから起きてー!」


 ぺしぺしぺしぺし高速で叩けば、ようやく起きた。

 振り向けばワイバーンはかなり接近している。


「んん、なんですかぁ? ごはんですかぁ?」


「いやいや、なんか来てるから回避行動をトリに取らせて!」


「わかりましたぁ。逃げてくださいぃ」


 トリは鳴き声を上げて回避行動を取り始めた。直後、口を開けたワイバーンが口の中から火球を飛ばした。

 火球はトリの翼を掠め、少し先で爆発を起こして消えた。


「わぁ、凄いですねぇ」


「凄いじゃなくてヤバいよ。でも、後ろについてくれたなら対処できる!」


 竜の類は酒に弱いって相場が決まっている!!

 【ドランクブレス】!


 酒気を帯びた煙を後方へ吐き出し、ワイバーンはそれをもろに浴びた。すると動きが乱れ、完全に眠って墜落した。


「プラン、ごはんができた」


「はいぃ。美味しそうですぅ」


 プランがトリに指示を出し、俺たちはワイバーンが落ちた地点へ着陸した。


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