第11話 綺麗になる
「ぶらっどー。勝ったぞー」
クマの魔物の死体を置いた場所に意気揚々と戻った俺が呼び掛ければ、ブラッドが少し離れた場所から戻って来た。
「無事なようで安心したぞ。で、どんな奴らだった?」
「四人組の冒険者。えーっと……説明するより見た方が早いかも」
「そりゃそうだ」
というわけで、ブラッドがクマを担いで一緒に拠点に戻る。
冒険者三人は眠ったままだ。
「こいつらか。戦士に魔法使いに神官……あと一人は?」
「レンジャー。逃げたのを追って眠らせた。あっちにいる」
とネコの手で方向を指さす。
「あっちか。案内してくれ。っと、目覚めたら厄介だから――」
クマとこん棒を下ろしたブラッドは、戦士を掴み取ると片手で頭を持ち、ぐりっと首の骨を折った。
おお、まるでボトルのキャップを開けるように……。
残りの二人も同じようにぐりっと首の骨を折られた。
「これでよし」
「じゃあ、ごあんなーい」
案内してレンジャーの男の首をぐりっとやってから、拠点にお持ち帰り。
首が反対側を向いた死体が綺麗に並べられた。
「なんかシュールだ」
思わず感想が口から出てしまう。
「俺がやっておいてなんだが、見ていて気持ちのいいもんじゃねぇな」
「そう? 私としては芸術性が感じられていいと思うけど」
「マジか」
ブラッドが俺から一歩離れた。
引かなくてもいいでしょうに。
「とにかく、いただきます」
まずはレンジャーからガブリ。
ピコン。
〈レベルが上がりました〉
おー、流石は人間。経験値が豊富でレベルが上がる。
次は魔法使い。ガブリ。
ピコン。
〈レベルが上がりました〉
次、戦士…………流石に金属鎧は食べられないよ。
「ブラッド、これ
ポンポンと鎧を叩く。
「はいはい」
ブラッドは戦士を手に取ると、雑に鎧とインナーを剥がして全裸にしてくれた。
おっ、中身は金髪美人だ。どっかの貴族の令嬢だったりして。
まぁどうでもいいけど。
ガブリ。
ピコン。
〈レベルが上がりました〉
〈アビリティ【美化・小】を習得しました〉
えっ、なにそれ!?
驚いた瞬間、体が一瞬光った。
「おいドラ、どうした? 進化か?」
「いや、なんかアビリティ習得しただけ」
「アビリティか。……なんかお前、綺麗になってないか? 毛並みとか
「え? ちょっと確認してみる」
アビリティ【美化・小】
・外見を少し美しくする。
「……アビリティ【美化・小】。外見を少し美しくする、だってさ」
「なんだそりゃ。男はイケメンにでもなるのか?」
「だと思う」
「……スキルやアビリティの習得は個人差があるって聞くが……ダメ元で食べてみるか」
ブラッドが豪快に金髪美人を食べた。
すると体が一瞬光って外見が変わった。
「習得したが、どうだ?」
「うん。醜い顔だったのが少しマシになった。それと体も少し引き締まって、ちょっとムキッとしてる」
「へぇ、なら目指してみるか……トロール界のイケメン」
「いいと思う。私もネコ界の女神目指してみる」
その方が面白そうだし。丁度いい目標だ。
「女神? ドラお前、メスだったのか?」
「あっ、言ってなかったね」
中身男だというカミングアウト――はしなくていいか。
一人称“私”にしちゃったし、オンラインゲームで中身の性別なんて誰も気にしないし。
「さて最後、神官」
ガブリ。
ピコン。
〈レベルが上がりました〉
……まぁ、そう簡単にスキルとかアビリティは手に入らないよね。
でも神官が人間の中で一番美味しいし、食べとこ。
俺がある程度食べ、残りはブラッドが綺麗に食べた。
残されたのは冒険者たちの衣服と装備一式。
ネコである俺は持ち歩けないし使えない。ブラッドも人間の物は小さすぎる。
んー、何か使い道はないかなー?
「――あっ、いいこと思いついた」
俺は衣服を咥えて持つと、小屋の中へ移動して自分の寝床に敷いた。
「よし。寝床完成!」
では早速お試しに座って……おおおおおー。いいね。地面よりも柔らかいし温かくて、これは心地良く眠れる。
毛づくろいをしながら腹休めに休憩。ある程度時間が経って小屋を出ると、ブラッドはクマの解体を始めていた。
…………暇だな。
見ていて勉強にはなるが、ネコの手では手伝うことなんてない。
手持無沙汰な俺は言った。
「ぶらっどー、暇だしちょっと出掛けて来る」
「おう、気を付けろよ。あと日が暮れるまでには戻って来い」
「りょーかーい」
というわけで森の中を自由に探索。深い森だから空気が美味しいし歩いているだけでいい気分転換になる。
おっ、アレは!
この前食べた、虹色の傘を持つキノコ――ニジイロダケを発見。
「暇だしなぁ……食べてまたちょうちょに導かれてみよう」
パクッと一口。
景色が変わって世界が歪む。
木々がぐにゃりと折れ曲がり、幹から狂った顔が生まれてゲラゲラ笑い出す。
「わー、すごーい」
幻覚って、ほんと意味がわからない。
――あっ、ちょうちょ。
青い蝶がヒラヒラ飛んで行ったのが見えて、俺は追い掛けた。
木々は俺を見て笑っているようでムカつくが無視して進む。
ん?
ちょうちょが止まった?
笑う木々の中、青い蝶はその場で小さく旋回し始めた。その下にはニジイロダケが生えている。
近づくと青い蝶は消え、ニジイロダケから可愛い二つの目と一つの口が生えた。
「やぁネコさん、僕はニジイロダケ。幻覚を引き起こす毒キノコさ!」
シャ、シャベッタアアアアッ!
驚く俺を気にせず、ニジイロダケは言う。
「こんな僕を二度も自分から食べて、存在しないものを追い掛けるなんて……君は狂ってるよ。でも、だからこそ気に入った。もっと僕を食べてくれ! 幻覚が続いている間に。そうしたら面白い力が手に入るかもしれない。じゃあがんばってねー!」
言いたいことを言ったニジイロダケの目と口が消えた。
「面白い力か……やってやろうじゃん」
目の前のニジイロダケを食べ、森の中を走った。
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