クラスの姫は私のわんこ

犬甘あんず(ぽめぞーん)

プロローグ

第1話

 アクセサリーはつけない。だって、家事の邪魔になるから。指や腕に何かをつけたら、みずきの大好きなハンバーグだって作りづらいし、首に何かをつけるのもあんまり得意ではなくて。


 だから、私は十五年生きてきて、一度もアクセサリーをつけたことがない。自分にも、人にも。


「ご主人様」


 鈴の音に似た声だった。彼女は今日も輝く瞳で私をじっと見つめている。星みたいなその輝きに促されるように、私は彼女の首に触れた。


 少し、緊張している。初めて人につけるアクセサリーがまさか、こんな。


「手、震えてるね?」


 おかしい、と思う。私と彼女はまだまだ友達ですらなくて、教室じゃほとんど話すこともない。学校での立ち位置だって違うのだ。彼女はいつも人に囲まれ、クラスの中心にいるけれど。私はいてもいなくても変わらない、目立たない生徒で。


 それなのに、私は。

 今、彼女に首輪をつけようとしている。


「……わかった。つけるからね」


 私はそっと、彼女の髪に触れた。金色の髪を肩の方にずらして、そのまま。

 淡いピンクの首輪を、彼女の白い首に——。

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