第15話  俺が未来の社長!!?

 俺の推しの『梨花』が言うには、AIグループの総帥、有栖川太蔵さんには早くに亡くした奥さんとの間にも子供がおらず、櫻子さんは、三歳の時に事故で両親に亡くした弟夫婦の一人娘なんだそうだ。太蔵さんは二人兄弟で他に親族もいないことから、誰もが櫻子さんが、婿を取ってグループを引き継いでいくと思っていた。

 ところが、降って湧いたように総帥は、田舎の支社の社食のおばさんに説教されて、一目惚れ。そばで健康を気遣って欲しいと懇願してめでたく結婚。俺、社食のおばさんの連れ子。


 こんな立場の俺の何処に、AIグループの一員になるなんて話が出てくるんだ?


「こちらに入っている情報では、調査次第であなたは、正式に有栖川家と養子縁組するって聞いてるわ」


 料亭の庭を散策して、周りの花に溶け込んでしまいそうな淡いピンクのワンピースに着替えた『』が俺に言った。

 なんで、俺より有栖川家の情報に詳しいのやら……

 愚痴ったら、あっさりと言われたよ。


「この世で一番大事な事は、相手の情報をいかに多く持っているかよ。これからいっしょに事業展開していく有栖川家のことは調べてあるわよ」


「う~~ん、でも、俺は太蔵さんに何も聞いてないんだよぉ。無理に環境を変えなくても良いって、普通の私学に行ってるし……」


「そうなのね? どちらにしろ私は、この縁談を破談にする気はないわ。幼い頃から、伯母様たちの役に立つところにお嫁に行く。そう言われて育って来たの。有栖川家なら申し分ないそうよ」


 俺は、混乱して帰ってきた。



 ▲▽▲




 その日の晩、有栖川家の食卓で____


 母さんは、相変わらず台所の方で、夜遅くに帰って来る太蔵さんの食事作りに余念なく、俺は、一人で食卓につくことになった。


「普通の日本食が食べたい」のリクエストが通って、この日はチキンの南蛮焼きとサラダと、みそ汁だったんだが、席の執事の時任ときとうさんがそばにいてくれた。


「ねぇ……時任さん……」


「坊ちゃま、時任で良いです」


「あのさ、俺が太蔵さんの後を継ぐなんて嘘だよね?」


 俺は、不安を時任さんにぶつけた。


「旦那様は、そのおつもりですよ」


 ぶぶっ!!

 俺は、チキンを吹き出してしまった。


「なんで~~??」


「あなたが、うらら様のお子様だからですよ。奥様亡き後、どなたも女性を寄せ付けなかった旦那様が、初めて好意を持った女性のお子様ですから」


「俺の意志は?」


「おや!? 何か夢でもございましたか?」


「いや……、アニメーターとか、フィギュア作ったりとか……」


「ああ、旦那様から連絡がありました。愛良様のことをアニメのキャラクターの名前で呼んで困惑させたとか……? 夢多きことも良いですが、現実も見て下さい。

 趣味で良いでなら、何なりとおやりください」


 時任さんは、冷たく俺を見ていた。


「時間は、たっぷりあります」


 ひえ~~っっ!!

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青い薔薇3本の花言葉/アニメオタクの俺が社長令息になったら、人生がイージモードでなくなった件 月杜円香 @erisax

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