第29話 9月8日大安
黒い月曜日は来なかった。
先週は米国の雇用統計に注目していたが、突発的に日米相互関税合意文書を作成するというニュースが入った。それに先立ち連邦控訴裁判所でトランプ関税は違法という判決が出た。(正確には一審の判決を支持した)
議会を通さず大統領令で発動した相互関税は権限を逸脱するという。国家緊急事態を宣言し法的根拠としていたが、第二審でも否決されたようだ。当然トランプ政権は最高裁に上訴し判決を取り消すよう動いた。
連邦最高裁判所の判事9人のうち6人は保守派らしい。三権分立の原則を考えれば政権とは中立のはずだが・・・正直いって最高裁でひっくり返されそうな気がする。
トランプ大統領は、すでに合意した国や地域との貿易協定を破棄することになるというが、日本側としたら願ったりかなったりではないだろうか。ついでにいえば対米投資80兆円なるものもなくなればいい。
日本の防衛予算は、GDP比1%枠内と義務教育で習ったような気がするが、岸田政権のとき2027年度までに2%に拡大すると決まった。財源として復興特別所得税を転用するときいてふざけるなと思ったのは、俺一人ではないはずだ。
トランプ政権は防衛費を2倍どころか5倍にしろという。どこにそんな金があるのだろう?アメリカとしては自国兵器を買わせるためにそんな無茶をいってるのだろう。ただウクライナ戦争を見ている限り、高価な兵器の必要性を疑問視させられる。
「五公五民」とは日本の国民負担率をあらわす言葉だが、これには社会保障費やおそらく国債償還費も含まれている。少子高齢化社会では致し方ない気もするが、防衛費増額のためさらに負担率が高くなると思うとやりきれない。
そうなると政権交代の機運が高まると思うが、次の政権がアメリカの要求を回避出来るであろうか?正直難しいと思う。
先日の参議院選挙で躍進した政党がいくつかある。そのうちの一つが、対米交渉の進め方として、トランプ大統領とゴルフをやったりして距離を縮めたらどうだ?と質問したらしい。なんだかホステスでもやってろとしか聞こえない。
トップ同士がなあなあで話を進めて、細かいことは実務者同士でやれという考え方なんだろうなと思う。石破総理がそんなことすることを想像出来なかったが、赤沢大臣が何度も訪米して交渉をまとめてきた。
一区切りついたというわけではないだろうが、石破総理が辞任するというニュースがあり夕方には記者会見 をやっていた。任期は1年という短命政権であった。選挙でことごとく負けて少数与党に転落。党内から厳しい批判が相次ぎネットでは誹謗中傷の嵐。
そんなに酷い総理だったか俺にはよく分からなかったが、辞任すること自体は驚くことではなかった。それ以前に何度も負けた自民党総裁選に勝てたことに驚いた。確か下馬評では高市早苗議員の方が高かったような気がする。
何度も言うが俺はささやかながら投資をしている。月曜日、日経平均株価や東証株価指数は最高値を更新していた。総理辞任に市場は好意的に反応したようだ。積極的には買ってないが運用成績は多少上がったので、俺的には良かったのだと思う。(へっへっへ世の中銭やという桑田はんのセリフを思い出した)
ぶっちゃけいえば、日本の株式市場に大して興味はない。非国民・国賊といわれてもかまわないが、もし新NISAの対象商品が日本株か債権のみだったら投資なんざやらなかった。
グローバル経済で稼げない企業ならこの先先細りは確実だし、過去を振り返れば、財テクブームのときあったファンドなぞゴミ株式パッケージ。社債で大金集めたあげくあっさり倒産した会社だってある。
新NISAは金融機関の手数料稼ぎのための制度と思ってた。実際そういう側面はあったと思う。貯蓄から投資へのスローガンを真に受けて、お国のため会社のために株を買って、金融機関を儲けさせる愛国の鑑になるぐらいなら、非国民上等である。
海外市場の時価総額加重平均型のインデックスファンドと、それに投資出来るメリットに気づいた人が積極的に情報発信してくれたおかげで、使える制度になった。
ネット証券会社が誕生し、手数料の安い商品を積極的に販売することになったのも見逃せない。銀行や証券会社の窓口に行ったら、金融商品を売るプロにつかまって高い手数料の商品を買わされることは必然。今だって大差ないだろう。
過去に囚われてアップデートしなかった情報弱者、といわれたら返す言葉は無い。
環境が整備され、優良な商品が並び、利用者の声が発信される。俺はこの情報を受信する能力がなかった。
言い訳になるが、公私にわたってデフレ経済にどっぷりつかり、お上のインフレ政策に懐疑的だった。取引先が町工場などの中小零細企業が多く、株高不況のマイナス面ばかり見ていたのだ。
r > gという有名な不等式。資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るという身もふたもない概念。「21世紀の資本論」という大ベストセラーで紹介されたのだが俺は見ざる聞かざる言わざるを貫いた。(だって自分が惨めすぎるだろ。取引先と会社の板挟みのなか細々働いて、夜スーパーで半額弁当買えなかったとか嘆く毎日過ごしてたんだぜ。金持ちの投資がより高い収益を上げて格差が広がっていくって)
子供のころ見聞きした景気がいい世の中、という幻想がいつまで経っても現実化しない。じゃあ自分はどう行動する?という考えはなかった。ただただ逃げたかった。
ニートになり暇が出来た。そして節約の知恵を授かるため情報収集を始めた。今まで見向きもしなかったYouTube動画に興味を持ち日がな一日眺める。たまたまFIREを目指す配信者の動画が目にとまった・・・
かつて投資家になるんだといって、同居する家族に白い目で見られていた若い俺は、もういない。投資を胡散臭く思い普通預金の残高だけ積みあがった。
その配信者は、じゃあ自分はどう行動する?という俺に欠けてものがあった。
足りないアタマなら知恵を盗めばいいのだ。エンタメとして楽しみつつ出来ることは真似した。自分の中の常識と矛盾する場合は、本読んだりネットで情報を漁った。
ニュースは節約と投資に関連するものばかり聞くようになった。おかげで馬鹿で尊大な某国大統領の言動や行動を追っかけるはめになった。このエッセイ?の話題の大半はあの男に対する感想である。俺は一体なにをやってるのだろう・・・
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